日経Automotive Technology雑誌ブログ

今年こそ、若者をクルマ好きに

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2009/01/01 00:00
鶴原 吉郎=日経Automotive Technology

 皆様、あけましておめでとうございます。昨年は当サイトをご愛読くださり、有難うございました。ことしもよろしくお願いいたします。

 昨年は、米国発の金融恐慌の嵐が吹き荒れた年でした。この嵐は止むどころか、今年ますますその強さを増しそうです。世界の自動車市場は需要が大きく落ち込み、トヨタ自動車は今期、71年ぶりと言われる営業赤字に陥ると発表しました。その他のメーカーも、決算の大幅な下方修正を相次いで発表しており、部品メーカーも含めて自動車産業は総崩れの様相を呈しています。

 今更ながら感じるのは、日本の自動車産業がいかに米国依存だったかということです。日本の自動車メーカーが世界中で販売を拡大しているとはいえ、大型・高価格のクルマが大量に売れる米国市場が、日本の自動車メーカー、特にトヨタ、日産、ホンダの大手3社にとってのドル箱だったことは疑いようがありません。トヨタ自動車の場合、営業利益の7割を米国で稼いでいるといわれています。その米国市場が崩れたことが、今回の赤字の主因になりました。

 日本の完成車メーカーはこれまで海外市場に活路を見いだすことで成長してきましたが、その脆さが今回の危機では露呈した格好です。そこで課題として浮上するのが、長期低落傾向に歯止めがかからない国内市場を、いかに活性化するかです。

 最近、自動車業界の人同士で集まると、必ず話題になるのが若者のクルマ離れです。先日、私も5人の大学院生と話をする機会がありました。すべて男性だったのですが、そのうち4人は「クルマにあまり関心がない」と語っていました。残りの1人がかなりクルマ好きだったことに、少し救われましたが。

 なぜ今の若者がクルマに関心がなくなってしまったのか。ある会合で、こんな話を聴きました。昔の若者は「早く免許をとって自分で運転したい」と思ったものだったが、今の若者は「クルマは乗せてもらうものであって、自分で運転するものではないのではないか」というのです。このことは、クルマの運転が特別な魅力あるものではなく、洗濯機を回したり、掃除機を動かしたりするのと同様な、日常的な行為になってしまっていることを示していると私は感じました。家事と同じような日常的な行為だとしたら、好き好んで自分からやろうとしなかったとしてもうなずけます。

 それでは、どうしたらクルマはもっと楽しい存在になるのでしょうか? 個人的に考えているのは、もっとクルマを不便な存在にしてみたらどうかということです。今のクルマは、運転がなるべくラクなようにステアリングは軽くなり、エンジン音はその存在をなるべく感じさせぬよう遮音されています。しかし、こうした改良が、クルマを運転しているという実感を奪い、ひいては運転する楽しみを奪ってはいないでしょうか。以前に、手動変速機を運転する楽しさについてこのコラムで書きましたが( 関連記事
)、難しい道具を使いこなしたほうが、喜びは大きいはずです。

 これまで、「より静かに」「より簡単に」「より快適に」進化してきたクルマ。しかし、水晶式時計より精度で劣る機械式腕時計が多くのファンを持つように、例えば「うるさいけどエキサイティングなエンジン音のクルマ」「乗りこなすのが難しいけどスリルが味わえるクルマ」「室内は狭くてガマンが必要だけど乗っている人同士が親密になれるクルマ」などに、クルマを運転する楽しさを復活させるヒントが隠れていないでしょうか。

 すべてのクルマが同じ方向を目指すあまり、画一的になり過ぎていることがクルマの楽しさを奪い、クルマ離れの一因になっている気がしてなりません。むしろ、他社が目指さない方向にこそ活路がありそうです。

 コスト削減に追われる多くの読者の皆様に参考にならない文章で申し訳ないのですが、こんな時代だからこそ、新春くらい、普段考えてみない可能性に思いを巡らしてみませんか。

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