日経エレクトロニクス雑誌ブログ

ささやかに夢を見続けている

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2008/12/17 10:50
小笠原 陽介=日経エレクトロニクス

 私は2007年12月からNE編集部に来て,やっと2年目に入った。いつもはTech-On!のニュース記事を書いている。今回は私的な話ばかりになってしまうが,ブログということでどうかお許しいただきたい。

 パソコンという「夢の機械」に魂を奪われたまま,気がつけば不惑にもなって自分の食いぶちも稼げないダメ人間になっていた。以前はパソコンやインターネット,デジタル機器などの分野を中心に,活用記事や製品レビューを書くフリーライターをしていたのだ。10代でその仕事を始めてから,20年あまりが経過していた。その暮らしがどうにもならないほど行き詰まった2007年の晩秋,たまたま見かけた求人情報に飛びついたときには,恥ずかしながら仕事の内容を十分に考える余裕すらなく,とにかく決まった給料がもらえれば,という志の低さだった。

 それでも,他の仕事でなく雑誌編集部という場所に潜り込んだのは,もちろん私には文字を書くくらいしかできることがないからだが,一方では,変わり行くこの世の中を見続けていたいという思いもあったからだ。「パソコンはきっと世の中を変える」――20数年前,一般ユーザーに普及し始めたパソコンは,10代の私にも大きな夢を見せてくれた。だからと言って何の力もない我が身には,その変化に携われそうもなかった。ならばせめて,その変化を見られる場所にいて,それを言葉に刻んでいきたい,というのが,私にとってのささやかな夢になった。そうして19歳の時から,パソコン雑誌に記事を書き始めた。

 今は「パソコン」や「インターネット」といった,進行中の革新を一言で象徴できるようなモノや技術はないかもしれない。けれども,昔から変わらず,営々と続けられてきた技術改良が,今もどんどん私たちの暮らしを,生活を変え続けている。インターネットや,そこでの検索エンジンがなかった頃,私たちはどのようにして調べ物をしていただろうか。携帯電話がなかった頃,人との待ち合わせはどのようなものであっただろう。その時代を確実に生きていたはずの人たちでさえ,今となってはもうよく思い出せないのではないか。

 身近な例を挙げれば,薄型テレビの普及は,部屋の中でのテレビの置き方を変えた。かつてのブラウン管テレビは,画面が大きくなればそれだけ奥行きも大きくなった。それゆえ,テレビは部屋の角に,斜めに置かれることが多かったのではないか。これが薄型テレビになった今,画面が壁面と平行になるように置かれることが増えたに違いない。そうすると,それを見る私たちの身体の向きも,他の家具の配置も変わることになる。もしかするとそれによって,家族のだんらんのありようが変わることさえあるかもしれない。そんな風にして新しい技術とその成果は,私たちの生活習慣を変え,ものの考え方にも影響を与えるのだ。

 今の私は,まだNE編集部の中で十分な仕事ができるほどの力はない。それでも,この変わり続ける世の中を見つめていられる仕事に就けたことに,心から感謝している。世界の至るところで,数多くの技術者が日々積み重ねている工夫や改良が,今後も世界を少しずつ変えていくだろう。それらはきっと,私たちの住むこの社会を,たとえ少しずつでも良くしてくれるに違いない。愚かなほどの楽観主義だと承知している。それでもなお,技術の進歩が明るい未来を築いていくという夢を,私は見続けていたい。これからもそうした変化から目を離さず,できればいつか,私なりの言葉で物語り,誰かに伝えられればと思っている。

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