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「B-CAS」がなくなると本当にうれしいか?

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2008/09/03 09:37
山田 剛良=日経エレクトロニクス

 「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会(デジコン委)」(情報通信審議会の下部組織)の今期の議論が始まったので,傍聴してきました(Tech-On!関連記事1)。

 デジコン委の今期の重要なテーマの一つは「地デジの暗号化(スクランブル)放送の廃止」です。いわゆる「B-CAS方式」をやめようという議論をするわけです。

 この議論は昨期から始まり,結論が出ないまま,今期に持ち越しになっています。今のところ,放送事業者や権利者,消費者団体系の委員がB-CAS方式の廃止に積極的な一方で,メーカー各社が難色を示している,という構図になっています(Tech-On!関連記事2)。委員会の空気を見る限り既に大勢は決しており,「B-CAS方式廃止は既定路線」のようにすら見えます。

 ただ私は,ほんとうにそれでいいのかなぁと感じています。例によってちゃんと考えがまとまっている訳ではありませんが,ブログだから書いてしまおうと思います。ぜひ皆さんのご意見もお聞かせいただければ幸いです。

法的エンフォースメントで「フリーオ」は取り締まれる?

 そもそも現在の地デジやBSデジタル放送にスクランブルが導入されているのは,「ダビング10」などの著作権保護ルールを機能させるためです。前回のブログでも書きましたが,地上デジタル放送は放送波に含まれたコピー制御信号によって,録画機側が放送をどう扱えるかを決められるしくみになっています。ただし,録画機が規定に従って動作するかどうかは,メーカーが仕様書通りにきちんと作るかどうかにかかっています。不心得なメーカーがコピー制御信号を無視するように作れば,自由なコピーが可能な「無反応機」が簡単に出来上がります。

 B-CAS方式はこうした無反応機が市場に出回るのを防ぐための仕組み(エンフォースメント)です。放送波の暗号を解除するために必要な暗号鍵を含んだ「B-CASカード」を,管理会社と契約を結んだ“従順な”メーカーにだけ支給する。契約でメーカーを縛ることで,仕様書通りの機器しか販売させない。このしくみをデジコン委は「技術的エンフォースメント」と呼んでいます。

 ところが2007年秋に,コピー制御信号に一切反応しない無反応の受信機「フリーオ」が登場してしまいました(Tech-On!関連記事3)。フリーオはユーザーが既に所有するB-CASカードを使わせることで,「カード支給の壁」をくぐり抜けました。さらに,海外からの通信販売という形を取り,販売の実体をわかりにくくすることで,国内法を適用した取り締まりを難しくしました。

 現在につながるB-CAS方式廃止の動きは,フリーオの登場を機に始まりました。権利者系の委員がフリーオを例に「B-CAS方式によるエンフォースメントは既に壊れている」と主張し,B-CAS方式を廃止して,それに変わる新たなエンフォースメント手段の早急な導入を求めたからです。新たな手段として現在,考えられているのが「法的エンフォースメント」です。ごく簡単に言うと,無反応機の製造や販売を違法化する法律を作るという方法です。

 一見,良さげなアイデアですが,よく考えると穴だらけです。そもそも法的エンフォースメントは国内法ですから,フリーオのように海外から直接販売される場合の取り締まりはやはり困難です。もちろん,フリーオのような製品を大っぴらに売ることはできなくなりますが,それは今だって大して変わりません。

 むしろ海外の小さなメーカーが日本向けに無反応機を製造・販売するビジネスが今以上に増え,収拾が付かなくなる可能性があります。B-CAS方式を廃止して放送の暗号化を解けば,受信機の開発はそれだけ楽になるからです。一方で法令を遵守せざるを得ない国内メーカーは,コピー制御を守る機器しか販売できないという「正直者がバカを見る」タイプの不公平が生じるかもしれません。

 法的制限をさらに進めて,製造・販売だけでなく,ユーザーによる「無反応機の所持」まで取り締まれるようにすれば,こうした事態は防げます。ですが,たかがテレビの録画程度で,そんな麻薬取締法なみの厳しい法律を成立させるのは非現実的でしょう。

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