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日経エレクトロニクス雑誌ブログ

テレビは今後進化するか

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2008/07/22 09:30
野澤 哲生=日経エレクトロニクス

 最近,気になっているのは,テレビはどうしてほとんど進化しないのだろうかという点です。CRTテレビから薄型テレビに変わったり,デジタル放送を受信できるようになったりしたことは確かに大きな変化ですが,その間に起こったインターネットや携帯電話機の進化と比べると小さいと思えてしまいます。デジタル放送が始まったころは,双方向機能が付いたことで「見るテレビから使うテレビへ」といったキャッチをよく聞きましたが,パソコンでできることのほんの一部をなぞっただけで新鮮味がありませんでした。

 ほとんど勝手な妄想ですが,私が実現してほしいと思い,しかも今の技術で実現可能と思うテレビは,例えばこんなテレビです。(1)テレビに人感センサや視線センサをつけて,テレビの前に人がいなかったり,あるいはいても人が画面を見ていない時は画面を消し音声だけにして省エネを図るテレビ,(2)テレビに顔認識機能を付け,見る人が誰かを認識して映すチャンネルを自動的に変えるテレビ,(3)(1)と(2)の機能に併せ,コマーシャルはデータ放送で事前に取り込み,見る人に合ったコマーシャルを見せるテレビ,などです。

 洞爺湖サミットは終わってしまいましたが,(1)のようなテレビが実現すれば,テレビの消費電力は大幅に減るはずです。以前取材したある大手広告代理店によれば,テレビは昔から「ながら視聴」,つまり,何かほかのことをしながらの視聴が多かったそうです。例えば,「食事をしながら」,「掃除などの家事をしながら」,「新聞や本を読みながら」,そして最近は「パソコンでインターネットをしながら」,テレビも点いているという状態です。「インターネットをする時間が増えてもテレビの視聴時間が減っていないのはそのため」(ある大手広告代理店)。

 こうした「ながら視聴」の鍵は,実は音声です。視聴者の立場からすると,熱心に見ていないテレビをつけっ放しにしたくなるのは,音声が流れているから。そして,食事やパソコンをしていても,テレビで野球やサッカーの実況が盛り上がるとついテレビの方を見てしまうのも,音声があるからです。ということは,視聴者がテレビを直接見ていない時は画面を消してしまって音声だけにし,視聴者が目を向けた時だけ画面をつけるようにしても,テレビの役割は何も変わりません。そして消費電力は大幅に下げられるのです。子供の遊びの「だるまさんがころんだ」のように,「鬼役」の視聴者に画面を消していることをテレビが気づかせないようにできれば,の話ですが。

 (2)は本当は,見る人に合った番組に切り替えられると,視聴者一人ひとりにオーダーメードの「自分番組表」が実現してもっと面白いのですが,放送という枠組みでは実現が難しいので,チャンネル単位の切り替え機能にしました。ただし,BSやCSの放送も含めれば,今でも100以上のチャンネルが同時に番組を流しています。これらのチャンネルから,見る人の好みにあったものを選べば自分番組表に近いものが出来上がりそうです。

 こうしたアイデアは,顔認識ではなくリモコンを使い分ける形であれば,日立製作所などメーカーも実際に研究しているようです。録画を利用した好みの番組の選択は以前からできるようになっていますが,「テレビはリアルタイムの放送を受動的に見るから優れている」という広告代理店の指摘を踏まえれば,(2)のような方法も,リアルタイムというテレビの良さを残したままパーソナル化を進める方策としてあり得るのではないでしょうか。

 (3)は,より効果的な広告効果を狙うためのアイデアです。コマーシャルのような短いコンテンツならば,データ放送などで事前にテレビに取り込んでおき,番組と視聴者の気分に連動したコマーシャルを流すことが可能なはず。インターネットでは米Amazon社のサービスのように買いたい本を向こうから知らせてくれる時代に,視聴者が見ていても見ていなくてもテレビが点いている時間が視聴時間,なんてビジネスモデルが今後も長く続くとはとても思えません。

 最近,編集部でユニクロのスクリーン・セーバー「UNIQLOCK」が流行っています。これは,パソコンのスクリーン・セーバーで一種のコマーシャルを見せる例で,これはパソコン側でテレビの良さを取り込んだ例ではないか思っています。

 実は他にもテレビやその他のディスプレイを大幅に変える妄想はいくつかあります。ただし,これらは私の妄想に終わらず,少なくないメーカーや放送局も実際に考えていて,中には2025年と実現の目標年を定めた団体もあるようです。これについては近いうちに日経エレクトロニクス誌の記事の中で紹介したいと思っています。

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