ケータイが薄型化する理由
最近,携帯電話機を買い替えました。NTTドコモのP906iです。色はメタル。シャープでかっこいいし,機能も豊富で気に入っています。movaからFOMAへの乗り換えだったため,通話時の音質もよくなりました。ただ,今まで使っていた丸っこいケータイより角張っているため,ちょっとだけ持ちにくい。単に慣れの問題かもしれませんが。
携帯電話機に関しては気になっていたことがあります。以前の携帯電話機は「クラムシェル=はまぐりの殻」という言葉のイメージに近い,ずんぐりした丸みのあるデザインが多かった気がします。一方,最近のものは,スクエアでソリッドなデザインが多い。丸みを帯びた製品でも,四角い箱の角を丸くした感じです。
最大の理由は,薄型化のためでしょう。丸いデザインには無駄が多い。形状を四角に近づければ,その分機能を詰め込む余地が生まれ,本体を薄くできます。P906iはことさらに薄さを強調した機種ではありませんが,それでも以前の携帯電話機よりは薄い。私の前の機種の厚みは24mmだったのに対し,P906iは17.4mmです。
もちろん薄型化はユーザーにメリットがあります。例えば,ワイシャツの胸ポケットに入れやすくなります。そうした実用面以上に,薄型ケータイには何か所有欲をくすぐるようなところがあります。
一方,薄型化すればするほど,必然的にホールド性は悪くなります。「薄型の携帯電話機は女性には人気がない」という話を聞いたことがあります。女性は,通話時やメールを打つときのフィット感を大切にするためでしょう。女性はケータイをハンドバッグに入れることが多いため,それほど薄さを気にする必要がないのかもしれません。
「こんなに薄い携帯電話機にこれだけの機能を詰め込みました」といった発表を見ると,素朴に「メーカーの技術はすごいな」と思います。特徴的な製品は,記事にもしやすいですし。ただ,すべてのユーザーが薄型ケータイを求めているわけではないのに,メーカーは「薄さ」を絶対的な価値だと見ている。そのかすかな違和感をずっと抱いていました。
袋小路の先に光はあるか?
最近,米Apple Inc.のiPhoneに代表されるような「アプリケーション・プラットフォームとしての携帯電話機」に興味を持ち,日本の携帯電話機メーカー各社に取材を申し込みました。ところが,軒並み取材を断られました。「携帯電話機のアプリケーション関連の仕様はキャリアが決めるため,アプリケーションでメーカーが工夫できることはほとんどない」というのです。
どこかで見たような構図だと思いました。そう,パソコンです。肝心要のOSを米Microsoft Corp.に握られているため,メーカーが独自色を出すのに苦労しています。形状に特徴のある製品もあるにはありますが,基本的に価格競争の世界です。
さいわい,携帯電話機はソフトウエアで差異化できなくても,ハードウエアの特徴をユーザーに訴求できます。しかも,ユーザーがそれほど価格を気にしているようには見えません。販売方法が変わって端末の価格自体は上がりましたが,頭金ゼロの割賦方式で購入できるため,かえって安く感じられるのかもしれません。
メーカー間でハードウエアの競争をするとしたら,何か基準が必要です。それが「薄さ」だったのではないでしょうか。「薄型化は,キャリアに仕様を縛られた携帯電話機メーカーが,製品開発のモチベーションを保つための暗黙のレギュレーションである」。これが私の仮説です。ただ,現在の薄型ケータイは既に十分な薄さになっています。「これ以上薄いケータイがほしい」というユーザーはあまりいないでしょう。
だとしたら,そろそろ次の基準が出てきてもおかしくありません。先日,日経エレクトロニクス2008年5月19日号の「手のひらHDTV,ケータイを変える」という特集が読者から予想外の高評価を受け,編集部内で話題になりました。これで「携帯電話機の次の基準は高画質・高画素化である」と短絡的に結論付けるつもりはありませんが,次の基準が切実に求められているのは確かなようです。
















