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iPhoneはなぜアプリ開発者を惹きつけたのか

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2008/06/17 09:30
浅川 直輝=日経エレクトロニクス

 カリフォルニア州サンフランシスコにある巨大イベント施設「Moscone West」。2008年6月9日,米Apple社のSteve Jobs氏が会場のメイン・ステージに立ち,私はその会場前方でカメラを構えていた。

 GPSの搭載,199米ドルという価格,22カ国世界同時発売…。Jobs氏が明らかにする「iPhone 3G」の情報に,あるものは雄たけびを上げ,あるものは惜しみなく拍手を送った。WWDCやMacworldなどApple社関連イベントではおなじみの光景ながら,私は軽い違和感を覚えた。はて,この光景,この熱気,どこか別のイベントでも見たような。

 思い出した。3年ほど前,任天堂の岩田聡社長が「Revolution(後のWii)」の開発思想を明らかにしたのも,この会場,このステージだった。そのときも私はステージ前方でカメラを構え,そして会場はゲームの開発者たちによる熱狂の渦に包まれていた(Tech-On!関連記事)。

「iPhoneにはビジネスの香りがする」

 なぜiPhoneは,アプリケーション開発者の心を惹きつけ,熱狂させるのか。以前に山田デスクが同様の趣旨でブログを書いているが,今回のWWDCの雰囲気に肌で触れた身として,異なる視点で分析してみたい。

 一言でいうなら,岩田氏もJobs氏も開発者に「このプラットフォームで一儲けできる!」という夢を与えることに成功したのだ,と思う。

 3年前,ゲームの開発者たちが岩田社長の講演で最も共感していたのは,「ゲームの開発費を引き下げ,参入障壁を低くする」という点だった。PlayStation 3(PS3)やXbox 360といった他のプラットフォームは,あまりに高い3次元グラフィックス処理性能のゆえ,ゲームの開発費がケタ違いに高まる懸念があった。そうなれば,もはや中小のゲーム開発会社が参入する余地はない。岩田社長の講演は,こうした開発者の懸念を払拭し,「俺らも一儲けできるかも」と予感させるのに十分だった。

 さて,iPhoneである。WWDCの会場などで話を聞いた開発者が異口同音に口にしたのは,やはり「iPhoneなら一儲けできそうだ」という言葉だった。

 ある国内ソフトウエア開発会社の社長は「ここまでビジネスの香りが漂う携帯プラットフォームは,iモード以来」と表現する。「プラットフォームと呼ぶに十分な『600万台』という数の端末が,既に世界中にばらまかれている。これだけの規模の単一プラットフォームにアプリを供給できる利点は大きい。日本では,携帯アプリは大ヒットしてもせいぜい10万台で,もはや頭打ちの感がある」。しかも,今後Apple社は販売奨励金モデルを受け入れ,199米ドルという普及価格でiPhoneを全世界に売り出す。Apple社のもくろみどおり,今年中に1000万台の出荷を達成できれば,プラットフォームとしての規模はPS3に近づく。

 Apple社は,iPhone向けアプリケーションの販売を「App Store」で一元管理する計画だ。配信や課金,集客をApple社に一任できるので,開発者は良質なアプリの開発に専念できる。アプリの購入費用に占めるApple社の取り分は30%で,70%はそのままアプリケーション開発会社の収入となる。ビジネス構造だけみれば,Apple社は任天堂のようなゲーム機メーカーそのものである。

 これまで開発者がアプリの開発で収入を得たければ,一般にはまずキャリア(携帯電話事業者)と交渉する必要があった。世界展開を目指すなら,世界中のキャリアと交渉するという膨大な手間が発生する。しかも,収益の大半はキャリアに持っていかれる。iPhoneなら,Apple社にソフトの価値を認めてもらうだけで,世界中のユーザーへの販路が拓く。

 こうしたiPhoneのビジネス環境の良さは,現時点ではGoogle社の「Android」とは対照的,と言わざるを得ない。「Androidには,iPhoneのような数百万台という出荷実績がない。というか実機自体がない。アプリの配布プラットフォームの詳細も不明。これでは,開発環境としていまいち燃えない」(前述のソフトウエア会社の社長)というのは,多くの開発者に共通する思いだろう。あくまで現時点では,の話だが。

「複数のアプリが起動できない」のは欠点か

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