『環境に良い』は正直ではない
先日,環境問題について,ある大学教授に取材する機会がありました。テレビなどにもたびたび登場している著名な教授です。予定していた取材テーマに関する議論があらまし終わりかけたとき,その教授は,興味深いことを話し始めました。
「この前,環境問題について議論したいというので,トヨタ自動車の重役会に呼ばれて出向きました。そこで役員の方は,ハイブリッド車『プリウス』についてこんなことを言っていました。『我々は環境で稼がせてもらっているけど,決して環境に良いものを造っているとは思っていない。だから,環境に良いなどという表現は使わない』と…」
確かにプリウスは,ハイブリッド技術の採用と低燃費などの特徴によって環境ブランド/環境イメージを確立しました。しかし,クルマは「もともと環境負荷の塊のようなもの」(ある環境コンサルタント)です。もちろんプリウスは,従来車と比べれば環境負荷は小さいのかもしれませんが,その存在自体は環境に負荷を与えているものに変わりありません。トヨタ役員が言っているのは,おそらくそういうことなのでしょう。教授は,このトヨタの姿勢を「正直だ」と高く評価していました。
教授が真に言いたかったのは,このあとです。次のように続けました。
「同じように複数の大手電機メーカーの環境担当とも何度か議論をしたことがありますが,残念ながらトヨタのような発想は持っていませんでした…」
つまり,電機メーカーは,例えば消費電力を下げるなどある一面から少しでも環境負荷を低減すると「環境に良い」と大々的に言いたがる傾向があるというのです。それをトヨタとは逆に,「正直ではない」と教授は指摘します。この指摘は,実に微妙な違いを指しているのかもしれません。言葉の言い回しだけの違いかもしれません。もっとも,クルマと電気製品の環境負荷ではスタート・ラインが大きく異なるわけですから,単に自動車業界と電機業界を比較するのは適切でないかもしれません。それでも,この話を聞いたとき,非常に重要な指摘ではないかと感じました。
多くの企業にとっては今,環境イメージを打ち出すことが非常に重要になってきています。消費電力の低減や有害物質の除去,環境配慮設計(リサイクルのしやすさ)…など,環境性能を高める技術開発を急ぐ努力も必要ですし,環境性能をアピールする戦略も欠かせないでしょう。しかし,それがあせりにつながり,例えば先般の製紙業界による再生紙の古紙配合率偽装のようなことになっては,元も子もありません。こと環境問題に関しては,一筋縄に解決できないことを消費者はよく知っています。そこで重要なのは,ある製品の環境性能(負荷)に対する表と裏の両面を「正直」に伝える姿勢を持つことではないでしょうか。むしろその方が,消費者も現実味を感じて付いてくるのではないだろうか――。教授の話はそんな示唆であると捉えました。


















