太陽電池は石油の代替になるか
コストはあと3年で家庭の電気代と並ぶ
太陽電池の従来からの課題であるコストの問題も,近い将来解決する可能性があります。太陽電池には「累積生産量が2倍になれば,発電コストが8割になる」という過去30年近く続いている経験則があります。2006年当時の太陽電池の世界の累計生産量が約5.7GW,発電コストが約46円/kWh(太陽光発電協会調べ)という実績と,現在の太陽電池の増産の勢いを考慮してこの経験則に当てはめれば,2011年には発電コストが現在の家庭向け電気代の水準に並ぶ計算です。これはNEDOの「2030 年に向けた太陽光発電ロードマップ(PV 2030)」で,2010年度に太陽電池の発電コスト目標を23円/kWhとしていることにほぼ一致します。
上述のように,電力会社の電気代は今後上がりこそすれ,下がる可能性は低いでしょう。このため,行政組織が太陽光発電による電力を高値で買い取る「Feed-in Tariffs」制度を導入せずとも,あと数年で太陽光発電事業が自律的に動きだす可能性があるわけです。
最後は効率です。ここでは変換効率より,太陽電池の製造や維持管理などに投入するエネルギーの,太陽光発電による「返済期間」を示す指標「エネルギー・ペイバック・タイム(EPT)」について触れます。このEPTは太陽光発電にとって非常に重要です。仮にEPTが太陽電池システムの製品寿命より長ければ,太陽電池を作れば作るほどエネルギーを無駄遣いしていることになり,エネルギー問題を解決する手段としては全く意味を成さないことになってしまいます。
ところが,EPTについては太陽電池の関係者でさえ意見が大きくバラついています。「EPTは結晶Si系太陽電池でさえ2年を切っている」という人もいれば,「EPTはモジュールだけで8年,周辺装置も入れれば20年」と主張する人もいます。「材料の運送にかかるエネルギーが入っていない」「工場建設にかかるエネルギーが考慮されておらず,それを考慮したら20年」という人もいます。
EPTは1.5年以下
こうした,EPTの値についての認識の差は主に参照しているデータの時期がまちまちであることに拠っているようです(関連記事)。言い換えれば,EPTが8年や20年というデータは古い,のです。ちなみにNEDOが公表しているデータによると,多結晶Si系太陽電池のEPTは100MW/年規模の生産で1.5年(資料)。アモルファスSi系太陽電池では100MW/年規模で1.1年以下(同)です。このNEDOのデータ自体,2000年ころのデータで新しいとは言えません。最近ではフレキシブルなCIGS型太陽電池でEPTが1〜2カ月と主張するメーカーも出てきています。量産が始まったばかりの色素増感型太陽電池でもEPTはかなり短い模様です(日経エレクトロニクス5月5日号の「量産始まる有機太陽電池,効率,耐久性でも躍進」)。
太陽電池の開発の歴史は40年以上と長いですが,特にこの数年の技術の変化は非常に早く,10年前の知識では追いつかなくなっています。例えば,結晶Si系太陽電池で製造にかかるエネルギーの7〜8割を占めるSiウエハーは,2004年ころは平均で300μm厚でしたが2007年には150〜200μm厚と3年ほどで2/3以下になっています。近い将来50μm厚のSiウエハーも登場する可能性があります。Siウエハーがこれだけ薄くなれば太陽電池のEPTは大きく短縮されます。量産規模も大きく変わっているデータで,2000年時点では1製造ライン5MW/年だったものが,最近は同100MW/年に近づいています。量産規模が大きくなれば,工場などの初期コストは単位モジュール当たりでどんどん小さくなります。
太陽光発電はしばしば環境問題,つまりCO2排出量削減の文脈で語られることが多いのですが,さらに差し迫ったエネルギー問題を解決する手段としてもかなり有効なのではと思っています。
























