日産ゴーン社長がコミットメント経営をやめた背景
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「日産,必達目標経営を修正」──。2008年4月2日,日本経済新聞に注目すべき見出しが躍った。日産自動車(以下,日産)社長兼最高経営責任者のCarlos Ghosn氏(以下,ゴーン氏)が,2008年度からスタートする同社の次期中期経営計画から,必達目標(コミットメント)経営を修正すると発表したのだ。
ご存じの通り,コミットメント経営では,数値目標をはっきりと打ち出し,誰が責任を負うかを明確にしながら仕事を進め,目標達成に導く。達成すれば高い報酬が与えられ,未達なら厳しく責任を問われる。この方法で日産の経営危機を救った同氏は,産業界やマスコミからカリスマ的な経営者と讃えられることになった。
だが,本誌2007年9月号特集「持続なき復活─日産車の現場に灯る黄信号」でも指摘したように,倒産の危機から脱した同社が成長軌道へ進むべき段階になると,次第にこのコミットメント経営には「副作用」が生じるようになった。いや,サプライヤーを含めた同社のクルマづくりの現場を走り回って得た感想をここで正直に述べさせてもらうなら,「弊害」と表現した方が正しいと思う。それほど,コミットメント経営は,倒産回避後の日産には合わないものとなっていたようだ。
今なお日産に部品を収めているある部品メーカーは,ゴーン氏が表明したコミットメント経営の廃止の決定について「まあ,そうでしょうね」と語った。あまりにさらっと言うので,こちらが拍子抜けしたほどだ。総じて,協力メーカーは,日産がコミットメント経営を廃止することを,好感を持って受け入れているようだ。だが,本音では「遅いよ」という気持ちがあるのかもしれない。
上記特集で,私が最も訴えたかった点は,情報が上に「伝わらない危機」である。「日産の危機は,ゴーン氏が設定したコミットメント達成の延期にあるのではない。それは単にゴーン氏が理想とする成長スピードに対する若干の遅れと判断することもできる。それよりも深刻に思えるのは,現場の情報が日産の上層部にきちんとフィードバックされているのかという疑問を,サプライヤーが抱いていることだ」(同特集)。
このときの取材で,かつて日産で部長を務めたあるOBはこう警告を発した。「衰退に向かう会社の共通点は,現場の情報に上が耳を貸さなくなることだ。今の日産も…」と。日産が稼ぐ利益は依然として多い。しかし,「業績を見るだけでは,日産が抱える本当の危機は分からない」という声が渦巻いていたのである。(注:サプライヤーの中で取材対象に選んだのは,日産グループだけでなく,競合他社のグループとも取引をしており,クライアント企業の比較が可能な企業のみ。また,日産グループから取引を解消された企業は,公平性の観点から除外した)。
























