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日経エレクトロニクス雑誌ブログ

「ソフトウェアは作れなくなるか」

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2008/03/31 09:40
清水 直茂=日経エレクトロニクス
いま,日本のコンピューター業界に幽霊がさまよっている。その正体は――「ソフトウェアは,いまに作れなくなってしまう」という不安である。コンピューター・システムの規模拡大とともに,ソフトウェアの生産効率が急速に低下している。コンピューター・メーカーが人と金をいくら注ぎ込んでも,ソフトウェアは作れなくなってしまうのか。

 現在,多くのメーカーで,規模が急速に拡大するソフトウエア開発への対策が急務と言われています。こうした現状に対する警告を発したのが冒頭に引用した文章・・・ではありません。実はこの文章と今回の表題は,約37年前に発行した「日経エレクトロニクス」誌の創刊号(1971年4月12号)に掲載した記事の冒頭文と表題です。

 私はこの創刊号の記事を読んだとき,暗澹たる気持ちになりました。37年前の状況を報告した記事にもかかわらず,あまりにも現状と酷似しているからです。37年前からなにも対策が進んでいないように思えるのです。

 先日,ソフトウエアの信頼性開発に長年携わってきた菅野文友氏に話を伺ってきました。菅野氏はこれまでNTT,日立製作所,岩手大学,東京理科大学,帝京技術科学大学大学院に勤めてきました。現在79歳です。

 菅野氏は,ソフトウエア開発の現状に対して「昔から変わっていないどころか,悪くなっている。いったん落ちるところまで落ちないと本当の危機感は生まれない。危機感がなければ変わらない」(菅野氏,以下の発言はすべて同氏)と突き放します。理由として「ソフトウエア開発は『人財』が一番大事。どうしようもない戦後教育によって,人財が育っていない」ことを挙げます。「基礎的な知識が足りないし,そもそもしつけがなっていない。こんな人たちにソフトウエアは開発できないし,危機を克服できるわけがない」と言うのです。特にマネジメントをできる人がいないと嘆きます。「だから,どうしようもない」と。もちろん菅野氏は,逆説的な意味でのエールを現在奮闘しているソフトウエア技術者に突きつけています。

 現状が「どうしようもない」とはいえ,何か対策はないのかと聞いてみると「戦前教育を受けた人たちを間近で見ていた団塊の世代の力を借りるしかない。現在の人たちは,一度彼らに再教育してもらうべき」だと言うのです。

 さらに「たかだか50年程度の歴史しかないソフトウエア開発は,もっともっと謙虚にハードウエア開発の手法を学ばないとダメだ。ハードウエア開発には1000年以上の歴史があるのだから」とも…。ハードウエア開発の中でも特に,技術の伝承の重要性を強調しています。そして「ソフトウエア開発に携わる人たちはきちんと技術を伝承しているのか」と疑問を投げかけます。技術の伝承はツールを使えばできるものではなく,人から人へと伝えることで実現できるものです。「伝える人がダメなら,なにも伝わらない」のです。その結果が,37年前から同じ危機感が叫ばれる現状だというのです。

 技術の伝承は近年,ハードウエアを開発するメーカーで重要なキーワードになっています。このキーワードを,ソフトウエア・ベンダーはもっと重要視する必要があるのかもしれません。もちろん伝承するべき人の教育も。多くの課題を突きつけられているソフトウエア開発ですが,今から37年後に「ソフトウエアは作れなくなるか」という表題をつけた記事が成立することだけは,避けねばなりません。

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