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日経エレクトロニクス雑誌ブログ

気が付けば,ほとんどがファインダーやディスプレイ越しの記憶

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2008/03/28 09:30
大久保 聡=日経エレクトロニクス

 季節はいよいよ春本番です。桜の開花宣言が出され,東京でもあちらこちらで桜の花を見かけるようになりました。街では卒業生とおぼしき羽織袴あるいは着物姿の若い人たちも目立ちます。楽しげに,カメラでパシャッパシャッと晴れ姿を撮り合っています。

 私事ですが,ウチの息子は保育園を先日卒園し,この春から小学校に入ります。卒園式では親たちが子供たちの晴れ姿を盛んにカメラで写したり,ビデオに収めたりしていました。もちろん,家庭ではカメラ係である私も例外ではありません。運動会や学芸会などで撮影したビデオ・テープの締めくくりとして卒園式の様子を収めるべく,カメラを回しました。入園してから卒園まで,家族を収めたビデオ・テープは10本程度になったでしょう。たまに昔のビデオを引っ張り出しては,息子や妻と思い出話に花を咲かせるのは楽しいものです。

 ただ最近,「ビデオ・カメラで写すのはいかがなものか」と思うことが多々あります。撮影が面倒くさいというわけではありません。理由は,楽しかった思い出の多くが,ビデオ・カメラのファインダーや液晶ディスプレイ越しの記憶になっているためです。楽しかったときの記録,例えば運動会のリレーで必至に走る息子の姿はテープに残っています。しかし,そのときの自分自身の記憶にある映像は,息子の姿を捉えたビデオ・カメラの液晶ディスプレイに表示されたものです。決して,自分の瞳で「直接見た」ものではありません。いくら液晶ディスプレイがきれいになっても,それは実像ではありません。本当にその場に自分がいたという実感が希薄になりがちで,悲しくなってきます。

 このような思いを抱くのは,私だけではないと思います。私の知り合いに聞いてみると,「確かにそういう感じがする」と答えが返ってくることは少なくありません。それでは,どうすれば解決するのでしょうか。解決策はいくつかあると思いますが,私は自動撮影が一番だと考えています。例えば,対象物が撮影できる場所に三脚を設け,その上にビデオ・カメラを取り付けて自動的に撮影するといった具合です。運動会や学芸会などでは有効ではないでしょうか。

 実現するには課題が多々あるでしょう。例えば,何時間も連続撮影するとなるとビデオ・カメラの記録媒体がすぐに満杯になってしまいます。写したいものをちゃんと写せているかどうかも分かりません。撮影後,膨大な映像データに対する編集作業は大変でしょう。課題を挙げれば切りがありません。これらの課題を乗り越えるには,写したいものを自動認識する画像認識技術が不可欠です。それを使えば,対象物を認識したときだけ撮影できます。さらに被写体が移動してもちゃんと追尾できるような機構が必要でしょう。

 私の勝手な想像ですが,このような技術がビデオ・カメラに搭載されるのはそう遠くないと考えています。最新のデジタル・カメラやビデオ・カメラには,画像認識技術を駆使した機能が次々に盛り込まれてきているためです。例えば,笑顔を認識してシャッターを切る,ソニーのデジタル・カメラ。最近は大人や子供を見分け,例えば子供の笑顔を優先してシャッターを切る機能を備えるまで進化しています。松下電器産業が今年4月に発売するデジタル・カメラは,タッチ・センサを搭載した液晶パネルで被写体を指定すると,その被写体をカメラが自動で追尾し,ピントや露出を合わせ続けて撮影できます。同社のビデオ・カメラは顔認識機能を備え,露光やダイナミック・レンジなどを補正する機能を備えています。顔認識機能の搭載機は今後さらに増え,機能もどんどん発展していくと期待は膨らみます。

 このような事例が,自動認識・自動追尾・自動撮影のビデオ・カメラの実現につながるにはまだ課題が多いのは確かです。一人ひとりの顔を間違いなく見分けるまで顔認識技術を高め,さらに広い範囲で追尾するためにモータを使った機構部を設けることが必要になるはずです。運動会のように,観客席から遠く離れた位置にいる自分の子供を認識するには,CCDやCMOSセンサなどの画素数をもっと増やさねばならないかもしれません。ただし,これらの課題は致命的ではないでしょう。例えば,一人ひとりの顔を見分ける顔認識技術は既にあります。製造コストはかなり高くつきそうですが,機器メーカーが製品化に挑戦する価値はあると思います。初めてビデオ・カメラを購入する消費者は分かりませんが,既にビデオ・カメラを所有する人たちにとって,このようなビデオ・カメラは買い替え候補に挙がるでしょう。

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