日経マイクロデバイス雑誌ブログ

「3次元LSIで最先端を走るホンダ」

記事にコメントする
コメントを読む
ソーシャルブックマークに追加する
この記事にタグを付ける
記事のタイトルとURLを入れたメールを作って,知人に紹介する
後からこの記事を見られるように保存する
2008/01/28 10:46
朝倉 博史=日経マイクロデバイス

 2007年秋に米国で開かれた3次元LSI関連の学会で衝撃的な発表がありました。貫通電極を使った3次元LSI技術を使って,マイクロプロセサ,A-D変換器,DRAMをウエーハ状態で接合し,動作確認をしたというものです。さらに,関係者を驚かせたのは,その発表が半導体メーカーからではなく,自動車メーカーのホンダの研究開発子会社によるものだということです。LSIの技術開発成果で,畑違いと思える自動車メーカーに半導体メーカーが先を越されたというわけです。長年,LSIの積層技術開発に携わってきた大手半導体メーカーの技術者は,「半導体メーカーは何をやっていたのかと考えさせられた」と言います。

 かつてLSIは微細化によって高性能化,低消費電力化を遂げてきました。ところがここへ来て,物理的な寸法の縮小に伴うリーク電流の増大などに伴い,LSIの性能を高める手段が,LSIの材料や構造を変える技術に移行しています。従来の微細化による技術が「スケーリング」だったのに対し,新たな技術は「等価的スケーリング」と呼ばれています(NIKKEI MICRODEVICES,2007年12月号の特集,2008年1月号のキー・ワードを参照)。
 貫通電極を使った3次元LSIは,その等価的スケーリングを実現する一つの有効な手段として注目されています。従来の2次元平面上に機能回路を集積する場合に比べ,3次元化することで回路間の距離が短くなり,高性能化に有利となるからです。しかも,今回のようなウエーハ同士の積層は,チップ同士の積層やパッケージ同士の積層に比べて,より高い生産性および高性能化が期待できることから,究極の3次元LSIの姿といえます。
 今回,ホンダは世界に先駆けて,その究極の3次元LSIを試作しました。「半導体メーカーでもここまでの成果は見たことがない」と大手半導体メーカーの技術者や大学関係者は,驚きの声を上げます(詳細はNIKKEI MICRODEVICES,2008年2月号のレポートおよびキー・パーソンに掲載)。

 開発したホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパンは,ホンダが自動車の本業以外の新分野を開拓することを目的に2002年12月に発足しました。研究開発のテーマは脳型の情報処理や,稲の収穫量を増やす遺伝子など,「21世紀に役立つ技術の研究」であれば基本的に制約はないということです。
 一方,半導体メーカーは通常,テーマ設定の際に「それが何の役に立つか,社業にどう貢献するか」が要求されます。逆にそれが問われない研究開発の環境があったからこそ,今回の成果が出てきたといえそうです。企業にとって「選択と集中」だけが勝つためのすべてではないことを,今回の出来事が物語っています。

とても参考になった 77
まあ参考になった 3
ならなかった 1
 投票総数:81
Tech-On!ユーザーからのコメント
記事中に誤りなど,編集部へのご連絡にはこちらの入力画面をお使いください。編集部へのご連絡

最新号

2009年11月号
日経マイクロデバイス
2009年11月号から
Cover Story

究極の太陽電池

次々世代の太陽電池に向けた技術開発競争が幕を開けた。目標は光電変換効率40%超の「究極の太陽電池」。従来の延長線上にない技術を使い,既存の太陽電池の限界突破を目指す。この実現により家庭や発電所などへの普及がさらに進むだけではなく・・・(続きを読む

最新号を一冊買う
動画

定期購読者限定サービス

雑誌掲載記事の検索&PDFダウンロード
● 本誌記事を全文検索で探すことができます。
● 探した結果は,本誌記事とほぼ同じ体裁のPDFファイルとしてダウンロードできます。
● 1カ月あたり40ページ分までのダウンロードは定期購読者なら無料です。
アーカイブサービスとは
雑誌掲載記事の検索&PDFダウンロード

日経マイクロデバイス バックナンバー

2009年10月号
2009年10月号 Cover Story LED照明市場の立ち上げ前倒し

LED最大の潜在市場と目される照明向け市場の立ち上がりが早まりそうだ。家庭やオフィスで普通に使われる白熱電球や蛍光灯の代替を目指す。

2009年09月号
2009年9月号 Cover Story リーズナブル・デバイス

急成長が見込める新興国向けの電子機器を支える電子デバイス,これが「リーズナブル・デバイス」である。とにかく安く,早く,大量にばらまくことで,ボリューム・ゾーンの電子機器市場を切り開く。

2009年08月号
2009年8月号 Cover Story NAND型フラッシュ,Tビットへのシナリオ

NAND型フラッシュ・メモリーが,技術進化の分岐点に差し掛かっている。これまで大容量化と低コスト化をけん引してきた微細化が,早ければ2012年に1Xnm世代で限界を迎える。

雑誌バックナンバー