「3次元LSIで最先端を走るホンダ」
2007年秋に米国で開かれた3次元LSI関連の学会で衝撃的な発表がありました。貫通電極を使った3次元LSI技術を使って,マイクロプロセサ,A-D変換器,DRAMをウエーハ状態で接合し,動作確認をしたというものです。さらに,関係者を驚かせたのは,その発表が半導体メーカーからではなく,自動車メーカーのホンダの研究開発子会社によるものだということです。LSIの技術開発成果で,畑違いと思える自動車メーカーに半導体メーカーが先を越されたというわけです。長年,LSIの積層技術開発に携わってきた大手半導体メーカーの技術者は,「半導体メーカーは何をやっていたのかと考えさせられた」と言います。
かつてLSIは微細化によって高性能化,低消費電力化を遂げてきました。ところがここへ来て,物理的な寸法の縮小に伴うリーク電流の増大などに伴い,LSIの性能を高める手段が,LSIの材料や構造を変える技術に移行しています。従来の微細化による技術が「スケーリング」だったのに対し,新たな技術は「等価的スケーリング」と呼ばれています(NIKKEI MICRODEVICES,2007年12月号の特集,2008年1月号のキー・ワードを参照)。
貫通電極を使った3次元LSIは,その等価的スケーリングを実現する一つの有効な手段として注目されています。従来の2次元平面上に機能回路を集積する場合に比べ,3次元化することで回路間の距離が短くなり,高性能化に有利となるからです。しかも,今回のようなウエーハ同士の積層は,チップ同士の積層やパッケージ同士の積層に比べて,より高い生産性および高性能化が期待できることから,究極の3次元LSIの姿といえます。
今回,ホンダは世界に先駆けて,その究極の3次元LSIを試作しました。「半導体メーカーでもここまでの成果は見たことがない」と大手半導体メーカーの技術者や大学関係者は,驚きの声を上げます(詳細はNIKKEI MICRODEVICES,2008年2月号のレポートおよびキー・パーソンに掲載)。
開発したホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパンは,ホンダが自動車の本業以外の新分野を開拓することを目的に2002年12月に発足しました。研究開発のテーマは脳型の情報処理や,稲の収穫量を増やす遺伝子など,「21世紀に役立つ技術の研究」であれば基本的に制約はないということです。
一方,半導体メーカーは通常,テーマ設定の際に「それが何の役に立つか,社業にどう貢献するか」が要求されます。逆にそれが問われない研究開発の環境があったからこそ,今回の成果が出てきたといえそうです。企業にとって「選択と集中」だけが勝つためのすべてではないことを,今回の出来事が物語っています。




























