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「電気電子離れ」とどう向き合うか

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2008/01/23 09:30
宇野 麻由子=日経エレクトロニクス

 日本の大学で,電気電子離れを懸念する声が上がっている。その代表例が,東京大学での電気電子工学科の人気の落ち込み。同大学では2年次に,3年次以降の各専攻に学生を振り分ける際,電気電子工学科の人気が従来に比べてかなり落ち込んでいる。こうした事例は東京大学だけに限らない。

 危機感を覚える大学の教員たちは,人気回復に向けた策を練ろうと議論を始めている。実際に行動を始めた大学もある。東海大学は工学部電機電子工学科に「キッチンスタジオ」を設けた。身近な電化製品である電磁誘導加熱(IH)方式のクッキング・ヒーターに生かされている電気電子工学技術を学生が分かりやすいように示す。電気電子工学への興味を学生に持ってもらうことが最大の狙いだ。

 電気電子離れは日本の電機業界にとって深刻な問題である。企業は人材供給の大半を大学から受ける以上,いずれは電機業界の人材不足という形で現れる。既に人気低下の影響を実感している電機メーカーもある。「過去に比べると,エレクトロニクス産業に対する人気が下がっていると感じている。ITや家電産業は競争が厳しい割に,かつての華やかさがないことが原因ではないか」(ソニー EVP 技術戦略,知的財産,エレクトロニクス事業戦略担当 木村敬治氏)と分析する声もある。

 人材を供給する側の大学と供給される側の企業が互いに協力して人材確保に努めなければ,やがて日本の電機業界に深刻な人材危機が訪れることは想像に難くない。そこで海外の人材に目を転じる企業は少なくない(2008年1月14日号特集記事)。一方,国内で人材を獲得するために注目を集めているのが,一定期間学生が企業内で研修生として働くインターンシップ制度や大学との共同研究の拡充である。これまでの「待ち」の姿勢でなく,企業が積極的に人材発掘にかかわろうというのである。

 内閣府に設けられた総合技術科学会議では,2004〜2005年頃に科学技術人材の育成が議題となり,インターンシップの充実が検討され始めた。一般にもインターンシップへの興味や関心は高まっており,増加する傾向にある。文部科学省の調査によれば,2006年度に大学でのインターンシップ実施率は前年度比約3%増の約66%となった。工学部に関しては,学部生1万2364人と大学院生2018人がインターンシップを経験している。

 ただし,その多くのケースが夏期休業中に1〜2週間行うだけ。短期間では実践的な仕事は任せられず,企業にとっても大学にとっても十分な成果を生み出しているとは言えないのが現状だ。共同研究についても,教授への委託研究としての意味合いが強い。

 実は,日本の電機メーカーでも海外の人材獲得を目指す場合には,より長期のインターンシップや共同研究を実施している事例が多い。例えば日立製作所は2001年に中国・清華大学情報科学技術院と連合実験室を設置し,大学院生も交えて共同研究を進めている。2006年には2カ月に約1回の頻度で日本から研究者を派遣して行う講義も開始した。学生に対し,同社ではどのような先端技術の研究を進めているのかを紹介するのが目的だ。

 東芝は,2001年に清華大学の学部生と大学院生合計100人弱に1年分の学費に相当する奨学金の支給を始め,ほぼ同時期に研究者15人の中国研究開発センターを立ち上げた。2007年には清華大学と省エネ・環境技術での共同研究を開始している。同社の場合,まずはインターンシップや奨学金により,参加した学生やその周囲の学生が自社の研究を理解してくれるようになることを狙う。その後,インターンシップなどに協力してくれた教員を中心に,自社の研究内容とテーマが合致すれば共同研究を行う。

 ここにきて,日本国内でも数カ月に渡る長期のインターンシップがじわじわと増え始めた。東芝は2005年に長期のインターンシップを開始した。修士課程の場合は1〜2カ月,博士の場合は3カ月以上で,2週間のいわゆる「就業体験」とは一線を画すという。2007年には47人を受け入れた。同社の研究開発拠点がない関西地方の大学に重点を置いているところが特徴だ。三菱電機も2005年に3〜6カ月の長期インターンシップを開始し,修士論文や博士論文の1〜2章分を社内で研究させている。年間約10人の学生を受け入れており,例年3人ほどが実際に同社に就職するという。さらに2008年8月に竣工予定の尼崎の新研究所内には,大学との共同研究のための研究所を設け,産学のつながりを強化する。NECも研究所を中心に,2006年から10人前後の長期インターンシップを受け入れている。

 実践的な経験を積むことができる長期インターンシップを大学のカリキュラムに組み込もうと,国も動き出した。2005年,文部科学省は「派遣型高度人材育成協同プラン」を開始した。大学から,大学院生を3〜6カ月の長期インターンシップとして企業に派遣するプログラムを公募する。選定されたプログラムは,大学が国から委託されて実行する。

 2005年度と2006年度にプログラムを公募し,合計30校の計画を選定した。情報通信分野やナノテクノロジー,メカトロニクス分野などで電機メーカーも協力する。プランはそれぞれ5年計画で,今は企業と大学がカリキュラムの試行錯誤を行っている段階だ。既に企業側からは「利益に直結しにくい基礎研究を,インターンシップの学生に任せることができる」,大学側からは「学術的な興味からではなく,社会のニーズや企業の利益を目指し,さらに時間制約のある中で研究することが学生にとって大きな刺激になっている」と,効果を期待する声が寄せられているという。

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