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著作権の議論がなぜ腑に落ちないかを今度は白田先生の話から考えてみる

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2007/12/17 09:40
山田 剛良=日経エレクトロニクス

 法政大学 社会学部 准教授の白田秀彰氏に会ってきた。日経エレクトロニクスの2007年12月17日号に掲載したインタビュー「法は単なる調整手段,技術者は自由に進め」のためである(Tech-On!に転載したインタビューの全文)。

 白田氏は著作権の研究者であり,10月に設立された「MiAU(インターネット先進ユーザーの会,同会のWebサイトへのリンク)」の発起人の一人を務めたり,それ以前から「ロージナ茶会」という著作権の私的研究会を作るなど,「ネットユーザー寄り」の立場を取る法学者として知られる人物である。「電子技術者が読む雑誌のインタビュー」ということで,入念な準備をしていただいたようで,熱のこもったお話しをうかがっているうちに,あっという間に4時間近くたっていた。

 白田氏のお話しはそれこそ,目から鱗がボロボロ落ちるような刺激に満ちたものだった。その中でも個人的に印象に残ったのが,著作権が新技術を取り込んでいく過程に関する話だ。ちょっと長いが,インタビューからこの下りを引用してみよう。

例えば19世紀,写真やレコード,映画といった新しい技術が生まれました。こうした技術が生んだ新しいメディアは,既存メディアの市場の一部を奪いながら新しい市場を開拓していきました。そのとき既存メディアは,最初は静観しているのですが,いざ新メディアが成長して自分たちのビジネスを侵すようになって初めて「我々の資産でビジネスをしているのだから分け前をよこせ」と交渉したり,裁判を起こしたりする。そこで市場取引に基づく経済学的な調整が最初に発生し,それでも解消しない場合に初めて価値判断に基づく法的な調整が行われる。このパターンを繰り返してきたのです。

 この説明がなぜ心に響いたかというと,ずっと引っかかっていた疑問が解けたような気がしたからだ。前回のブログ「著作権絡みの議論がなぜ腑に落ちないかをPerfumeとニコニコ動画から考えてみる」でも述べたように,私はここしばらく,「コピー・ワンス見直し(ダビング10導入)」や「私的録音録画補償金制度」といった著作権を巡る議論を追いかけてきた。この種の議論は必ず,どうも腑に落ちないもどかしい想いが残るのである。だが,白田先生の説明を聞き,視点を変えることで,その背景がようやく理解できた気がしたのだ。考えが完全にまとまっている訳ではないが,ブログだから書いてしまおうと思う。

理解しがたい発言がなぜ飛び出すのか

 例えば,私的録音録画補償金制度について議論している文化庁の「私的録音録画小委員会」。この委員会の議論ではしばしば,直感的には理解しがたい不思議な発言が,おもに権利者側から飛び出す。

 11月27日に行われた第14回の会合では,日本芸能実演家団体協議会実演家著作隣接権センターの椎名和夫氏から,「総体で不利益を被っていると思う権利者がいて,利益を被っている消費者とメーカーがいる。メーカーの利益を還元するという制度が必要ではないか」という趣旨の発言があった。同様の発言は,日本レコード協会専務理事の生野秀年氏や日本映画製作者連盟の華頂尚隆氏からもあった。何度もこの委員会を傍聴するとわかるが,こうした発言が出るのは今回に限らない。ほとんど毎回と言ってよい。

 私的録音録画補償金は,ユーザーが個人で楽しむために行う録音・録画(私的録音録画)に関して,著作者の不利益を補償する一定の著作権料を支払う制度である。著作権法ではユーザーによる私的な複製を原則,無条件で認めているので,この制度は特定のデジタル機器を利用する場合にのみ認められている。

 つまり補償金を支払う主体はあくまでユーザーである。ところが権利者サイドからはしばしば上記のような「補償金制度でメーカーの利益を権利者に還元すべきだ」という意見が出てくる。なぜだろうか。確かに現行の制度では,補償金を機器や媒体の価格に上乗せしてメーカーが徴収し,著作権団体に再分配するしくみになっているが,それはあくまで徴収を簡単に行うための便宜的な手段という位置付けだ。本来的な意味では,メーカーは補償金制度と関係ない。

 ここで白田氏の説明を思い出してみよう。新技術で生まれた新しいメディアはまず,既存メディアの一部を奪いながら成長し,新しい市場を開拓していく。分かりやすく言い換えると,既存メディアの資産にただ乗り(フリーライド)してビジネスを始める。市場が十分に発展した後で既存メディアとの調整が起きる。白田氏によると,比較的最近の例ではラジオがそうらしい。ラジオ放送が米国で始まった当初,ラジオ局は一切の著作権料を支払わずにレコードなどを放送に使っていたが,ラジオ局のビジネスが発展する過程で調整が起き,今のように著作権料を支払うシステムが出来上がったという。

 ここから先は私が白田氏の話を聞いて考えたことである。白田氏がそう話したわけではないので念のため。ひょっとして権利者はメーカーが製造する録音録画機器を,「自分たちの資産にただ乗りする新メディア」と見なしているのではないだろうか。法律的な建前はともかく,メーカーに対して「我々の資産でビジネスをしているのだから分け前をよこせ」と言っている。少なくともそう考えると,権利者サイドから「メーカーの利益を権利者に還元すべき」という趣旨の意見がしばしば飛び出す理由が,腑に落ちるのである。

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