理想の変速機とは
日経Automotive Technologyはちょうど1年前の2006年秋に、変速機の特集を組みました。自動変速機の領域で、CVT(無段変速機)がどこまで勢力範囲を伸ばすかに焦点を当てたものです。しかし、そのときにあまり誌面を割かなかった第3の自動変速機が急速に広がる兆しが出てきました。それがDCT(Dual Clutch Transmission)です。
DCTは、手動変速機の変速動作を自動化した「AMT(Automated Manual Transmission)」の一種ですが、2組のクラッチと2系統に分かれたギア列を組み合わせているのが特徴です。それぞれのクラッチには1速、3速、5速といった奇数段のギアと、2速、4速、6速といった偶数段のギアがつながっていて、二つのクラッチを切り替えることで偶数段のギアと奇数段のギアの素早い切り替えを可能にしています。
この方式の自動変速機を2003年に、量産車に初めて搭載したのがドイツVolkswagen社で、同社は「DSG(Direct Shift Gearbox)」と呼んでいます。それから4年、Volkswagen社に追随するメーカーは現れませんでした。しかしここに来て、にわかにDCTが普及の兆しを見せ始めました。今秋に三菱自動車と日産自動車が発売する新型車に採用されるほか、海外でもFordグループやChrysler社がDCTへの投資を拡大しています。DCTメーカー各社は、2015年にはDCTが世界の変速機市場の15〜20%を占めるようになると予測しています。
ここに来てDCTが注目されてきた理由は二つあります。一つは、トルクコンバータを持つ通常のAT(自動変速機)やCVTに比べて滑りがなく、アクセル操作に対するダイレクトな加速感を味わえること。そしてもう一つが、トルクコンバータの滑り損失がなく、また遊星歯車より伝達効率の高い平歯車を使っているため、通常のATよりも燃費が向上することです。CVTとの直接の比較データは今のところありませんが、CVTは高速域で金属ベルトの摩擦損失が増大し、燃費が悪化するという難点があります。高速走行する機会の多い欧州市場には、CVTよりも向く変速機といえるでしょう。
私も以前このブログで、Volkswagen社のDSG搭載車に試乗した経験(関連記事)について書きましたが、従来のAMTのぎくしゃくした動作とは打って変わって、非常に滑らかで素早い変速が印象的でした。通常のATに比べると、クリープが弱いのがやや気になりますが、慣れてしまえば問題のないレベルです。これで燃費もよいということになれば、まさに理想の変速機といえるかもしれません。
気になるのは、日本の変速機メーカーがDCTの開発で出遅れているように見えることです。DCTが手動変速機の機構をベースにしているのに対して、日本の大手変速機メーカーが、開発の主力をATやCVTに移していることも背景にあるでしょう。確かに日本のATは、世界でも最高水準に達しているといえます。しかし、量産化されてまだ4年のDSGが、すでにかなりの完成度に達していることを思えば、今のATの座も安泰とは言い切れません。日経Automotive Technologyは9月28日発売の「11月号」で、DCTの最新動向についての解説記事を掲載します。自動変速機の将来を考える材料にしていただければ幸いです。





















