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日経ものづくり雑誌ブログ

現場の「発想の芽」を摘んではいけない

2007/09/07 18:03
池松 由香=日経ものづくり
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 「首都高は小菅ジャンクションで○kmの渋滞」。盆暮れ時にラジオやテレビでよく聞くフレーズです。東京大学大学院工学系研究科の准教授で,近頃は「渋滞学」の提唱者としても知られる西成活裕氏は,この渋滞を解消するために国土交通省にある提案をしたそうです。その方法とは,中央環状線と6号三郷線が交差した直後に適当な長さの黄色い車線を引くだけ。西成氏は「鴨川カップリング作戦」と名付けました。その由来はというと……。

 交差直後に「車線変更禁止」を示す黄色い車線があると何が変わるのでしょうか。西成氏によると,人間はぴったりと横に並んでクルマを走らせることをなんとなく「気持ち悪い」と感じるといいます。だから,交互になるように無意識のうちに速度を調整する。交差する前から自然と交互に走るようになるので,スムーズに合流できるというわけです。

 この様子を西成氏は「鴨川の岸辺のカップル」になぞらえました。鴨川に行ったことがある方はご存じかもしれませんが,鴨川に向かって腰を下ろすカップルは,測ったかのように均等に間隔を空けています。このように「自律性のある人(個)が本来,持っている特性(要素)」を利用して全体の問題解決をするアプローチを「創発的アプローチ」と言うのだそうです。

 「全体の統制を中央で行う『トップダウン』に比べ,各構成員の自発的判断に任せる『ボトムアップ』(創発)はコストが掛からない。従来のトップダウン型からボトムアップ型に転換すべきだ」と西成氏。小菅ジャンクションで言えば,「立体交差点を造る」のがトップダウン,「黄色の線を引く」のがボトムアップのアプローチです。数日前に開催されたとあるイベントで西成氏が講演していた内容なのですが,実はこれはものづくり企業に重要なヒントを与えてくれている気がしました。

 そう強く感じたのは,講演後,ある大手家電メーカーでカイゼン活動を推進する方々と食事をしたときです。その中の一人が生産現場の現状についてこう教えてくださいました。「われわれが若い頃,会社は若手の教育に熱心だったが今は違う。コスト効率ばかり重視して教育費を削り,生産は外部人材に任せているのが実状だ」。

 そして,こうも話してくれました。「現場の人に作業手順書をつくって『ただこうすればいい』とだけ言う。『なぜそうした方がいいのか』も教えれば,意識が変わって生産効率はもっと上がるのに」。目先の効率を追求するあまり,人間が本来,持っているはずの「発想力」を奪っている−−これが日本のトップメーカーの現実です。

 市場や生産のグローバル化が進む中で,経営者たちはスピードの速い競争に打ち勝つ方法を模索しています。生産は人件費の安い外部人材か海外工場に任せればいい。本当にそうでしょうか。このまま現場の「発想の芽」を摘んでしまうことが後々,自分たちの首を絞めることになりそうな気がしてなりません。

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