頑張るメーカーの「提案型オンリーワン技術」
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厳しいグローバル化の波が日本の中小企業を襲っている。大手完成品メーカーはLCC(低コスト国)調達を加速させており,日本の部品メーカーからは「仕事を奪われる一方だ」という声が上がっている。大手電機メーカーから直接仕事を受注するある1次部品メーカーの社長は,自社が手掛ける金属プレス部品の業界の現状を次のように語る。
「これまで中国は『世界の工場』と言われてきたが,本当にそうなってきたなという実感だ。例えば,つい最近まで月産200万個と大量に日本で造ってきた薄型テレビ関係のアルミ合金製のプレス部品も,全量が中国メーカーに移ってしまった。ある大手有名電機メーカーは,リストラの一環で数千人規模の従業員が働く工場をいくつも海外に移した。この影響を受けて,協力メーカーだった部品メーカーの仕事は激減している」。
よく聞く暗い話だ。正直,部品メーカーからは愚痴もこぼれてくる。ところが,このプレス加工メーカーの社長は「嘆いていても,仕事が増えるわけじゃない」と愚痴をこぼす部品メーカーを一蹴する。「日本で仕事を取りたいなら,大手メーカーが欲しがる技術を持つしかないのは当然のことだ」と。
このプレス加工メーカーが得意とするのは深絞り技術だ。ICレコーダーのような細長い筐体も,汎用プレス機を使って1枚の板から見事に成形してしまう。このプレス加工メーカーが造った筐体を初めて見た時,私は「どこに継ぎ目があるのですか?」とこの社長に質問した。プレスした何枚かの部品を溶接して筐体を構成しているものの,外観品質を高めるためにうまく後処理して溶接跡を見えなくしていると思ったからだ。すると,この社長は,「ああ,あなたもね」という感じでこう語った。「よくそう言われるんですよ。でも,1枚の板から加工しています」。
他社では簡単にマネできないことは,次のようなやり取りが雄弁に語っている。ある大手ブランドメーカーの担当者とこの社長とのやり取りだ。
「この筐体,もう少し安くならない? 例えば,○円で」
「いいえ,安くなりません。どうしても安く調達したいのでしたら,その値段で加工してくれるところを探していただいて結構ですよ」
「いや,実はほかになくてね…」
「それなら,ぜひ,うちが提示する値段でお願いします」
「まあ,仕方ないね…」
得意技術を磨くために,このプレス加工メーカーが大切にしているのは,何と言っても「現場の粘り」だ。何しろ,「顧客からどんなに難しい加工の部品を持ちかけられても,断ったことがない」とこの社長は言うのである。その現場の粘り強さは,「できるまでやり抜く」という表現がぴったりだ。あらゆる技術や経験,ノウハウを駆使し,トライアル&エラーを繰り返して,何年をかけてでも,難加工を可能にする技術を身に付けるのである。できるまで粘り,最後は必ずものにするという姿勢が,顧客からの信頼という得難いものも生んできた。
そして今,このプレス加工メーカーが力を入れていることがもう一つある。それは「提案型企業」への脱皮だ。これまでは顧客である大手メーカーから「こうした部品はできないか?」と加工依頼を受け,先のような粘りで形にしてきた。だが,こうした方法だけでは大手メーカーの海外シフトの影響をどうしても受けてしまう。そのため,「受け身」をやめ,得意技術を生かして造れる部品を自ら見つけ出し,さまざまなメーカーへと営業を仕掛けるのである。
この社長の机の上には,最新の電機製品が所狭しと並んでいる。だが,1台も動かない。バラバラに分解されているからだ。製品を分解して中に使われている部品を一つひとつ丹念に確かめ,そのプレス加工メーカーの得意技術を利用して,より低コストで加工できる部品がないかと検討するのである。
提案型オンリーワン技術──。このプレス加工メーカーの方法に学べるのは,中小企業に限らないのではないだろうか。
























