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Xbox 360のどこが壊れやすいのか

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2007/07/30 09:29
浅川 直輝(日経エレクトロニクス)

 米Microsoft Corp.は,同社のゲーム機「Xbox 360」の故障対策費として,10億6000万米ドル(約1300億円)もの費用を計上した(Tech-On!関連記事)。製品の設計を手掛ける技術者にとっては,背筋が凍る金額である。家電のリコールが頻発している現状では,とても他人事では済ませられない。その原因がどこにあったかぜひとも知りたいところである。

 だが,巨額の出費を強いられた故障の詳細について,Microsoft社自身はかたくなに口を閉ざしている。ならば,自力で原因を調査するしかない。そこで日経エレクトロニクス編集部は,熱設計の専門家の協力を仰ぎ,Xbox 360の熱対策の解析を試みた。

 熱対策に焦点を絞った理由は二つある。一つは,Xbox 360が頻繁に熱暴走を起こすゲーム機として知られていること。もう一つは,Xbox 360が故障して動作不能になる際に,「パキッ」という音が発生するとの証言があることだ。これは熱対策の不備で部品に熱負荷がかかり,どこかが破壊されたと考えるとつじつまが合う。

 解析のために用意したXbox 360は2基。1台は,ITpro編集部が2005年末に購入したXbox 360。もう1台は,ITpro編集部のヘビー・ゲーマー記者が個人的に所有するXbox 360。こちらは今回問題になっている故障を起こし,2007年5月に修理済みの機械である。Microsoft社が仮に,修理にあたって新たな熱対策を施していれば,両者を比較することで故障の原因があぶりだせるかもしれないと考えた。

 解析の詳細は日経エレクトロニクス2007年7月30日号に掲載したが,本稿でその一部を紹介したい。

グラフィックスLSIのヒートシンクが小さい

 まず,2005年末購入のXbox 360を解析した。3次元グラフィックスの演算量が多そうなゲームをプレイして,Xbox 360の標準的な消費電力や排熱能力を評価するためだ。


図1 Xbox 360のゲームに熟達するITpro記者の協力を得て,LSIの稼働率を限界まで高める (画像のクリックで拡大)

 Xbox 360の消費電力はDVD装置を動作させた状態で170Wほど。この時の排気の温度は約45℃だった。室温(23℃)との差は22度である。「家電機器などの設計では,排気と室温の差は通常,10度前後を目指すのが常識。これはそもそもかなり高い」(熱設計の専門家)。


図2 Xbox 360動作中の排気温を測定する (画像のクリックで拡大)

図3 ゲーム時の消費電力は170W前後 (画像のクリックで拡大)

 騒音対策で回転数を抑えたためか,冷却ファンの風速は最大1.1m/sと,一般的なデスクトップ・パソコンの1/2〜1/3に留まる。専門家は「筐体の大きさ(309×258×83mm3)を考えると,空気の入れ替え量はやや不足している」と評価する。

 次に,Xbox 360の筐体をこじ開け,メイン・ボードを露出させた。「グラフィックスLSIのヒートシンク,小さいなあ。これで本当に冷やせるのか」との声が専門家から漏れる。


図4 手前がグラフィックスLSIのヒートシンク。奥にあるのがマイクロプロセサ向けのヒートパイプ付きヒートシンク (画像のクリックで拡大)

 グラフィックスLSIのヒートシンクが小型になったのは,上部にDVD装置を配置したための止むを得ない措置とみられる。このDVD装置の底面がヒートシンクの上部を覆うことで,空気の流路を形成する。「パソコンでは,確実に空気を流すためにヒートシンクの上部まで一体型のダクトで覆うのが普通」という。しかし,Xbox 360ではスペースが足りなかった為か,ダクトをヒートシンクの手前までに留め,代わりにDVD装置や筐体で上部を塞いでいる。

LSIの温度は100℃を超える

 冷却機構の能力を確かめるため,ヒートシンクの温度を測定した。マイクロプロセサとグラフィックスLSIのヒートシンクにそれぞれ熱電対を取り付け,筐体を閉じてXbox 360を動作させた。

 「おお,ぐんぐんと温度が上がっていく…」


図5 二つのヒートシンクに温度計の端子を取り付けた (画像のクリックで拡大)

図6 筐体を閉じた状態で温度を測定 (画像のクリックで拡大)

 ゲーム開始からわずか5分で,グラフィックスLSI向けヒートシンクの温度は70℃まで上昇した。温度勾配は約10℃/分である。

 15分経った頃には,マイクロプロセサ向けヒートシンクの温度は58℃で安定したのに対し,グラフィックスLSI向けヒートシンクは80℃に達した。室温との差は57度。仮に真夏の室温35℃を想定すると90度を超える計算になる。このとき,グラフィックスLSIのチップは100℃を超えている可能性がある。

 今回は通気口が埃や障害物で塞がれていないなど,冷却には有利な条件で測定した。通気口の詰まりやダクトのずれなどで冷却性能が落ちれば,さらにLSIの温度は上がり得る。もし熱対策が故障の原因とすれば,故障箇所はグラフィックスLSIおよびその周辺の部品である可能性が高そうだ。

修理機も熱対策は変わらず

 最後に,2007年5月に修理したXbox 360の筐体を開け,2005年末に購入したXbox 360と比較した。

 「あれ?ヒートシンクもファンもまったく同じだね」

 意外なことに,修理済みXbox 360の熱対策部品の構成は,2005年末購入のXbox 360と見た目はまったく同じであった。Microsoft社は少なくとも2007年5月までは,Xbox 360の熱設計を変更せずに修理を実行していたことになる。

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(解析の詳細は,日経エレクトロニクス2007年7月30日号でお読みいただけます)

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