Xbox 360のどこが壊れやすいのか
米Microsoft Corp.は,同社のゲーム機「Xbox 360」の故障対策費として,10億6000万米ドル(約1300億円)もの費用を計上した(Tech-On!関連記事)。製品の設計を手掛ける技術者にとっては,背筋が凍る金額である。家電のリコールが頻発している現状では,とても他人事では済ませられない。その原因がどこにあったかぜひとも知りたいところである。
だが,巨額の出費を強いられた故障の詳細について,Microsoft社自身はかたくなに口を閉ざしている。ならば,自力で原因を調査するしかない。そこで日経エレクトロニクス編集部は,熱設計の専門家の協力を仰ぎ,Xbox 360の熱対策の解析を試みた。
熱対策に焦点を絞った理由は二つある。一つは,Xbox 360が頻繁に熱暴走を起こすゲーム機として知られていること。もう一つは,Xbox 360が故障して動作不能になる際に,「パキッ」という音が発生するとの証言があることだ。これは熱対策の不備で部品に熱負荷がかかり,どこかが破壊されたと考えるとつじつまが合う。
解析のために用意したXbox 360は2基。1台は,ITpro編集部が2005年末に購入したXbox 360。もう1台は,ITpro編集部のヘビー・ゲーマー記者が個人的に所有するXbox 360。こちらは今回問題になっている故障を起こし,2007年5月に修理済みの機械である。Microsoft社が仮に,修理にあたって新たな熱対策を施していれば,両者を比較することで故障の原因があぶりだせるかもしれないと考えた。
解析の詳細は日経エレクトロニクス2007年7月30日号に掲載したが,本稿でその一部を紹介したい。
グラフィックスLSIのヒートシンクが小さい
まず,2005年末購入のXbox 360を解析した。3次元グラフィックスの演算量が多そうなゲームをプレイして,Xbox 360の標準的な消費電力や排熱能力を評価するためだ。
Xbox 360の消費電力はDVD装置を動作させた状態で170Wほど。この時の排気の温度は約45℃だった。室温(23℃)との差は22度である。「家電機器などの設計では,排気と室温の差は通常,10度前後を目指すのが常識。これはそもそもかなり高い」(熱設計の専門家)。
騒音対策で回転数を抑えたためか,冷却ファンの風速は最大1.1m/sと,一般的なデスクトップ・パソコンの1/2〜1/3に留まる。専門家は「筐体の大きさ(309×258×83mm3)を考えると,空気の入れ替え量はやや不足している」と評価する。
次に,Xbox 360の筐体をこじ開け,メイン・ボードを露出させた。「グラフィックスLSIのヒートシンク,小さいなあ。これで本当に冷やせるのか」との声が専門家から漏れる。
グラフィックスLSIのヒートシンクが小型になったのは,上部にDVD装置を配置したための止むを得ない措置とみられる。このDVD装置の底面がヒートシンクの上部を覆うことで,空気の流路を形成する。「パソコンでは,確実に空気を流すためにヒートシンクの上部まで一体型のダクトで覆うのが普通」という。しかし,Xbox 360ではスペースが足りなかった為か,ダクトをヒートシンクの手前までに留め,代わりにDVD装置や筐体で上部を塞いでいる。
LSIの温度は100℃を超える
冷却機構の能力を確かめるため,ヒートシンクの温度を測定した。マイクロプロセサとグラフィックスLSIのヒートシンクにそれぞれ熱電対を取り付け,筐体を閉じてXbox 360を動作させた。
「おお,ぐんぐんと温度が上がっていく…」
ゲーム開始からわずか5分で,グラフィックスLSI向けヒートシンクの温度は70℃まで上昇した。温度勾配は約10℃/分である。
15分経った頃には,マイクロプロセサ向けヒートシンクの温度は58℃で安定したのに対し,グラフィックスLSI向けヒートシンクは80℃に達した。室温との差は57度。仮に真夏の室温35℃を想定すると90度を超える計算になる。このとき,グラフィックスLSIのチップは100℃を超えている可能性がある。
今回は通気口が埃や障害物で塞がれていないなど,冷却には有利な条件で測定した。通気口の詰まりやダクトのずれなどで冷却性能が落ちれば,さらにLSIの温度は上がり得る。もし熱対策が故障の原因とすれば,故障箇所はグラフィックスLSIおよびその周辺の部品である可能性が高そうだ。
修理機も熱対策は変わらず
最後に,2007年5月に修理したXbox 360の筐体を開け,2005年末に購入したXbox 360と比較した。
「あれ?ヒートシンクもファンもまったく同じだね」
意外なことに,修理済みXbox 360の熱対策部品の構成は,2005年末購入のXbox 360と見た目はまったく同じであった。Microsoft社は少なくとも2007年5月までは,Xbox 360の熱設計を変更せずに修理を実行していたことになる。
(解析の詳細は,日経エレクトロニクス2007年7月30日号でお読みいただけます)
■少し前に発売された「エリート」という名称の機種の分解記事によると,GPUとCPUは,半田付け後に周囲をエポキシ接着剤で固定してあるそうです。熱で基板がゆがんだり,すぐ上にあるDVDドライブの振動が伝わったりして,半田にクラックが入っていたのではないでしょうか? 記事のはじめに書いてある「パキッ」という音が発生するとの証言とも関係しそうです。
すでに他の方の指摘にもありますが,GPUの表面温度が100度になったからといって,チップが壊れるとは限りませんし,おそらく,壊れないことをMSは確認済みでしょう。なおかつ,想像ですが,危険な温度に到達したかどうかを判別して動作停止させるセンサーくらいは内蔵しているのではないでしょうか。
問題は,一枚のプリント基板の中で,ある部分は40度,別の部分は100度というように温度のばらつきがあると,基板が反り返ってしまう可能性があるという点で,チップ自身が壊れなくても半田が割れてしまえば装置はもう動作しません。ちなみに,パソコンの場合には,発熱の激しい高性能GPUを使っている場合,それは通常別基板で,基板面積もマザーボードよりもずっと小さいですから,こういうことは起こりにくいでしょうね。コンポーネントを組み立あわせる据え置き型パソコンでは大丈夫でも,ノートパソコンや家電製品にするときには問題が生じるわけです。なお,据え置き型であっても,「横置きのパソコンやピザボックス型のX端末の上に重いディスプレイを置いて使っていて,何度もディスプレイの向きを変えていると,その重みを間接的に受けたマザーボードが半田割れを起こす」なんて例は結構ありました。20インチの重たいブラウン管を使っていた時代のことですが。
高性能CPUやGPUの値段に比べれば,半田付けのコストなんてたかが知れていますし,前者は装置の最高性能を決定する基幹部品,後者は正しくつながっていて当たり前のありふれたもの。ユーザーも雑誌も前者には興味を示しても,後者は普通気にもしません。でも,ハードウェアを製造販売する会社は,それではいけない。今回の欠陥はMSの無知と経験不足によるものとしか言いようがないのですが,しかし,今になってMSを笑っている人だって,熱でチップ単体が壊れることを想像した人はいても,基板のそりや振動といった問題について意識していた人はほとんどいないのではないでしょうか?
■興味深く読みましたが,
>「家電機器などの設計では,排気と室温の差は通常,10度前後を目指すのが常識。これはそもそもかなり高い」
>冷却ファンの風速は最大1.1m/sと,一般的なデスクトップ・パソコンの1/2〜1/3に留まる。
・家電との比較とPCとの比較が混在しています。比較対照ならやはりゲーム機ではないでしょうか。ソニー製の最新ゲーム機も排気温度は50℃に達します。
>専門家は「筐体の大きさ(309×258×83mm3)を考えると,空気の入れ替え量はやや不足している」と評価する。
・ダクトを使用した換気ですので,その判断は正しいでしょうか。ダクト内の流速と温度差から判断するべきでは?
>仮に真夏の室温35℃を想定すると90度を超える計算になる。
・実測しているのですから実測値を載せましょう。
>グラフィックスLSIのチップは100℃を超えている可能性がある。
↓
>LSIの温度は100℃を超える
・なぜ見出しになると断定になるのでしょうか。GPUの適正温度を表記してませんが,何℃でしょうか?相当性能のPC用GPUも同様の温度になるようですが…
日経エレの記事にしてはお粗末な気がします。
■修理品にヒートシンクが追加された物が発見されるようになったのは6月からで、国内外共にほぼ同じタイミングで切り替わったようです。私の本体も6月11日あたりに修理に出しましたが、追加されているのを確認できました。計測したわけではないので、効果の程はわかりませんけどね。
(2007/08/02)■発売直後の分解記事とマドンナのブログを読んで買うのを控えました。チップがシュリンクして消費電力が下がったなら買おうかなと思っています。
(2007/08/01)■GPUのダイ小さくしても構造的に塞いで加熱しているなら同じことですね。
(2007/07/31)■発売直後の分解記事でこの問題に気がついた人はいたんだろうか?
(2007/07/30)■雑誌の方は読んでいませんが,縦置きだけで測定されたのでしょうか?
ユーザーの間では「横置きのほうがフリーズしにくい」と言われており,それでもフリーズするので頭を抱えているわけですが,縦置き時と横置き時の違いなども示していただけたら,良かったと思います。
■GPUが90℃とは驚きです。しかも対策されていないとは・・・・・
さすがMicrosoft,「仕様」ですか・・・
■マイクロソフトは製造をEMS業者に委託するにしてもこのような基本的な熱設計を確認せずに製品を開発したのであろうか?
確かにこの様な電子機器の開発はMSはなれていないとはいえ開発体制が少しお粗末ではないか?
■大変興味深く読ませてもらいました。
私は設計を専門にはしておりませんが,問題のとらえ方として面白かったので最後まで読みました。
ただ,熱が原因でないとしても,さらに突っ込んで,修理済みのXbox 360の上昇温度も測定してほしかったなあと思います。
そこで,温度に有意差があれば,なんらかの対策を取られた可能性もあるのではないかという疑問が残りました。
■大変興味深い記事なので,日経エレクトロニクス2007年7月30日号も読みました。推定原因の記載はありましたが,米Microsoft Corp.のとった具体的な対策がよく分かりません。情報がありましたら教えていただきたいと思います。
(2007/07/30)■熱対策部品以外の点で・修理品とそうでないものの差分があったかどうかを記載いただけたらと思いました。
(2007/07/30)
























