モータがなくてもハイブリッドはできる、まずはF1で腕だめし
F1から入るとは考えたものだ。過酷に見えて結構楽勝。何しろ何百kmか走ればレースは終わる。一般車は10万kmを超える勝負だからケタが違う。英Xtrac社と英Torotrak社がライセンス契約に調印した機械式エネルギ回生装置の話である(関連記事)。
Xtrac社はF1をはじめモータースポーツ用の変速機を設計・開発する会社。Torotrak社はフルトロイダル式のCVT(無段変速機)技術を持つ。Torotrak社はCVTを自動車に載せようと長いこと開発を続けているが(関連記事)、一般車では耐久性の問題があってなかなかモノにならない。F1で実績を積みながら、耐久性とじっくり取り組んでいこうということらしい。
F1を主催するFIA(国際自動車連盟)の会長、マックス・モズレー氏は、単純な“レース人間”ではない。周囲からどう見られているかに目を配りながら、極めて政治的に動く。「F1は環境問題にも前向きですよ」というメッセージを出したくてしょうがない。そこで、2009年にレース車の環境問題に対応した新ルールを導入する。「減速エネルギを回収し、加速時に放出する装置を装備すること」という項目がある。
ハイブリッドより軽くできないか
普通に考えればハイブリッド車のように発電ブレーキをかけ、出てきた電気を蓄電池、またはキャパシタにためておき、次に加速する時にモータで使うものになるだろう。トヨタ自動車は既にハイブリッド車で「十勝24時間レース」に連続出場、昨年は17位、今年は優勝した。優勝した「トヨタ スープラ HV-R」は前に10kWのインホイールモータを左右2個、後ろに150kWのモータを1個、都合3個のモータを使い、キャパシタに電気をためる。
F1で使えるのは60kW程度らしいから、ここまで本格的なハイブリッドにはならない。それでも20kg程度の重さは覚悟しなくてはならない。
これに対してXtrac社が考えている装置では、エネルギをフライホイールに貯蔵する。例えばブレーキ時、駆動系は走行速度に応じて減速し、一方のフライホイールはエネルギーを受け取って加速する。回転数が全然合わない。だから回転数の比を連続的に、短時間で変化させる必要がある。CVTの出番だ。
CVTの伝達効率は90%以上、CVT自体の質量は5キログラム程度とトロトラックは見積もる。フライホイールを含めた総重量がどうなるか、ルール変更で最低重量の規定がどうなるかにも左右されるのだが“ハイブリッド”に対して十分な競争力を持つはずだ。
心配だけど何とかなるさ
1つ心配なのはジャイロ効果。「地球ゴマ」で遊んだことのある方は体で感じただろうが、回るコマは頑固に自分の姿勢を守ろうとする。回転数の高いフライホイールをクルマに付けると、ハンドルを切っても、なかなか曲がりたがらないクルマができてしまう。ドライバーによっては嫌われるかもしれない。
ただし、現在のF1は意外と安定志向。逆に“スピン止め”として生かしてしまえばよい。また、この方向にフライホイールを回すと、ロール(左右の傾き)方向の動きも抑えるから、“スタビライザー”になる。
「その先に一般車という大きな市場がある」というTorotrak社の読みが正しければ、ジャイロ効果は利点になる。F1は目的でなく、手段なのである。





















