太陽電池バブルは大丈夫か
先日の2007年6月18日号の日経エレクトロニクスで,太陽電池のメーカーが雨後の筍のように増えているという特集記事を執筆しました。従来,太陽電池は10年以上の地道な研究開発を経てやっと作れるものだったのに,今後は全くの異業種メーカーが,製造ラインを丸ごと装置メーカーから購入して,いきなり製品を量産し始める例が急増する,という内容です。
記事の執筆後も,そうしたメーカーによる参入の発表が続いています(関連記事)。2008年後半にはこれら新規参入メーカーの生産量だけで計2GW/年を大きく超える見通しです。資源総合システムの調査によれば,2006年の全世界での生産量は2.521GW,日本での生産量が927.5MWですから,そのインパクトの大きさが分かるでしょう。現時点でも年率40%を超える勢いで増えている全生産量の伸びに拍車がかかるのは必至です。しかも,新規参入組は米国,中国,韓国などに多いため,現在日本がトップを占める太陽電池モジュール製造の地域別ランキングがあと1〜2年で大きく様変わりすることもほぼ確実と言えます。
こうした生産量やメーカー数の急増の背景には,各国政府による強力な太陽電池支援策があります。ドイツで始まった,太陽電池で発電した電力の高額買取政策「Feed-in Tariffs」は,今では欧州の多くの国や韓国,米国やカナダの一部の州に拡大しています。これが「太陽電池は金のなる木」として,異業種メーカー多数を太陽電池の製造に走らせる結果になりました。
一方で,日本はというと,かって「サンシャイン計画」「ニューサンシャイン計画」などで日本の太陽電池事業を支えた支援策は現在,全国規模のものはほぼ終了した状態です。そのためか,多くの国や地域で太陽電池の生産量が急増する中,日本の生産量は,ほぼ横ばい状態に留まっています。単純に考えると「日本も他国に負けない太陽電池支援策が再度必要だ」と旗を振りたくなります。
ところが,今回の取材でお会いした日本の大手メーカーの中で,Feed-in Tariffsのような強烈な支援策を声高に望む方はいませんでした。それどころか「今の生産量の伸びは,実際の需要を反映したものとは思えない。投機的な動きではないか」(ある日本の大手メーカー)と懸念する声を多く聞きました。ただでさえバブル気味の市場にさらに拍車をかけることを警戒しているようです。
政府による支援策はカンフル剤としては効果的ですが,どの国もこうした政策を永久に続けることはできません。実際,ドイツでは早くもこの制度の見直しが議論されています。支援策の本来の狙いは,メーカーに太陽電池を量産させて製造コストが十分に下がれば,後は支援がなくなっても自律的な市場が生まれる,というもの。しかし,現時点では「支援があるから製造コストを無理に下げる必要がなく,その結果価格が高止まりするという皮肉な結果になっている」(ある太陽電池メーカー)という指摘があります。各国がこの支援策を止めた時に,太陽電池が大幅な生産過剰に陥る恐れはないのか。現在の生産量のあまりに急激な伸びを見ていると,これらの支援策を「いかに混乱なく終わらせるか」が非常に重要になると思えます。
日本のある太陽電池関係者の中には,支援策がない日本の現状を肯定的に見る意見も聞かれます。「政府の補助金なしで横ばいならば,それほど悪い結果ではない。日本は世界に先駆けて太陽電池の市場が自律的に動き出している」。それでも,他国メーカーとの競争を考えると,それだけで生き残っていけるのかにも疑問が残ります。いずれにせよ,今後の太陽電池に対する支援には絶妙な舵取りが必要なことは確かなようです。


















