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渡辺竜王に迫ったコンピュータ将棋ソフトの「人間味」

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2007/03/30 10:20
堀切 近史(日経エレクトロニクス)
東京都港区のホテルで3月21日に開催された公開対局(写真:佐藤久)
東京都港区のホテルで3月21日に開催された公開対局(写真:佐藤久)

 「機械と指しているのではなく,まるで人間と指しているようでした。大変驚きました」(日本将棋連盟 会長の米長邦雄氏)−−。先週,将棋棋士の渡辺明竜王と,コンピュータ将棋ソフトウエア「Bonanza(ボナンザ)」が公開対局を行いました。渡辺竜王が112手で勝利を収めましたが「こちらが不利な局面もあった」と竜王が認めるほどの熱戦となり,大きな話題を呼びました。場内の興奮が醒めやらぬ閉会式で,観戦していた米長会長がこぼしたのが冒頭の言葉です。

注1)公開対局は,東京都港区のホテルで3月21日に開催された。2007年4月から始まる大和証券杯の特別対局として実現したもの。なお日本将棋連盟は現在,棋士・女流棋士が公の場で将棋ソフトと無断で対局することを禁止している。将棋のタイトル保持者が公の場で,コンピュータ将棋ソフトウエアとハンディなしの平手で対局するのは今回が初めてとなる。

注2)Bonanzaの実力はアマチュア六段,プロでは初段程度とみられている。開発者は,東北大学大学院で研究職に就く保木邦仁氏。保木氏の専門は理論物理化学で,将棋ソフトウエアの開発は趣味で手掛けた。棋力は自称「11級」で,アマチュアとしても決して強くはない。2005年6月,Bonanzaをフリー・ソフトウエアとしてWWWサイトに公開した。Bonanzaはスペイン語で「大発見」という意味という。

渡辺明竜王とBonanzaの公開対局の棋譜(提供:日本将棋連盟)
渡辺明竜王とBonanzaの公開対局の棋譜(提供:日本将棋連盟)

 Bonanzaはただ強いだけでなく,コンピュータ将棋ソフトウエアらしからぬ人間味のある棋風としても知られています。局面を優勢にするために,駒損となる手を指すこともあるそうです。従来のコンピュータ将棋ソフトウエアでは,あまりみられない特徴です。「将棋の局面評価には,『駒の損得』『王の安全度』『駒の働き』という三つの重要な要素がある。Bonanzaに人間味を感じる由来は,結果としてこの三つのバランスが取れている点にある」と,将棋プロ棋士六段で北陸先端科学技術大学院大学の飯田弘之教授は指摘しています。

参考文献)飯田,「コンピュータは本当に名人を超えられるか−Bonanzaの活躍」,『情報処理』pp.890-892,vol.47,no.8,2006年8月.

 Bonanzaがバランスのいい指し手を選択するのは,プログラムや指し手の探索アルゴリズムが導き出した結果に過ぎません。しかしそれが棋風や指し手という形と通してみると,人間味が生まれてくるということに私は興味をそそられました。

 渡辺竜王は,対局中の心の動きを自身のブログに綴っています。渡辺竜王とBonanzaの間で繰り広げられた,心理戦のようなやり取りがそこに表れています。興味深いのが,終盤の勝負の分かれ目となったBonanzaの一手「▲2四歩」のところです。渡辺竜王は「▲2四歩(とBonanzaが指したら,その後)からの攻め合いは僕が勝ち」とみていました。このため渡辺竜王は「▲2四歩はないだろう」と構えますが,Bonanzaは結局「▲2四歩」を指します。Bonanzaの読みが浅かったのが原因ですが,渡辺竜王は自身の読みの方が不充分ではないのではないかと,逡巡することになったといいます(渡辺竜王のブログ「渡辺明ブログ」)。

 Bonanzaはその強さ故に,研究対象となっていると言います。それだけではなく「人間味の源泉とは何か?」を考える素材としても,興味深い対象となり得るのかもしれません。

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■Bonanzaの強さや人間味は,ロジックだけで手を決めるのではなく,大量の棋譜をデータとして持っているからでしょう。歴史的で著名な棋譜の多くを持っているようです。だから,人なら,つい,うっかり,○×と思い込む,というような人間性のある手を打つことがあるのでしょう。ただ,ハードウエアがもっと高速になった場合に,これが吉と出るか,それは分かりませんが。

(2007/03/30)
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