お薦めトピック
- AD -
日経エレクトロニクス雑誌ブログ

なぜ我々はiPhoneに興奮させられるのか

なぜ我々は
iPhoneに興奮させられるのか

はてなブックマーク
Facebookでシェアする
Twitterでつぶやく
2007/01/23 09:57
今井 拓司(日経エレクトロニクス)

 米Apple Conputer, Inc.改めApple Inc.の「iPhone」の発表に,またしてもやられてしまった。一消費者として電話に大して興味はなく,iPodの新機種に期待していたら,まさか同じ製品として登場するとは。これでは,ついつい電話の方も欲しくなってしまうから質が悪い。

 iPhoneを紹介するWWWサイトを興奮気味で見ていると,同僚の一言で現実に引き戻された。「それってどれくらいの大きさなの?」。画面にはiPhoneの写真が大写しにされている。「多分これが原寸くらいじゃないですかね」。「これと比べてどうかな?」。同僚がおもむろに取り出したのはソニーのPDA「クリエ」。そこでハッと気付いた。iPhoneでできることって,PDAとあんまり変わらないじゃないか。最近ではPDA機能が付いた携帯電話機,いわゆる「スマートフォン」は何機種もある。何で自分は,iPhoneにこれほど興奮しているのか。

 興奮したのは私だけではなかった。特に米国での騒ぎは相当だったらしい。シリコンバレーのP記者によると,米国の大手テレビ局のABC社は,「iPhoneはあなたの生活を変える可能性がある」とまで報道したそうだ。日本でも,マスコミから個人のブログまで,発表後数日は余波が続いた。

 これだけiPhoneが注目を集める理由は何か。こう問えば,恐らく十中八九「iPhoneが備えるユーザー・インタフェース」と返ってくるだろう。確かにiPhoneのユーザー・インタフェースは凄そうだ。「Mac World Conference & Expo 2007」の基調講演でiPhoneを紹介したApple社CEOのSteve Jobs氏は,試作機を自ら手に取り使い方を実演した。その姿が,インターネットを通じて多くの聴衆を惹き付けたのは間違いない。

 しかし,ちょっと待って欲しい。ユーザー・インタフェースが製品の魅力として大々的に取り上げられるなんて,そんなことがありえるのか。私は,ユーザー・インタフェースの開発に携わる研究者や技術者の方々と,かれこれ十数年のつきあいがある。その間「ユーザー・インタフェースが製品の売りになる」という話は,ほとんど耳にした覚えがない。関係者と顔を合わせると,現実の製品開発では多機能化や高性能化ばかりが優先されて,「使いやすさ」はいつも二の次にされてしまうとぼやかれるのが常だった。

 iPhoneが巻き起こした反響は,製品の機能や性能よりも優れたユーザー・インタフェースが消費者の関心を呼ぶ時代の幕開けを告げたのか。どうやら本当にそうらしい。少なくとも本誌の読者は,潮の変わり目を感じている。本誌は2007年1月29日号で最近のヒット商品を分析する特集を掲載する(次号予告)。この記事のために読者を対象に実施したアンケート調査では,「操作感や使い勝手の良さが売れ行きに貢献するようになった」との問いに「そう思う」を選んだ回答者は29.4%,「どちらかといえばそう思う」を合わせると全体の83%に達した。一方,「性能の高さや機能の豊富さが売れ行きにつながらなくなった」では,「そう思う」が同じく29.4%,「どちらかといえばそう思う」を加えて75.1%である。

 使いやすさが脚光を浴びる背景には,大きく二つの要因があると思う。一つは,パソコンやデジタル家電製品で,製品の機能や性能に飽和感が漂うことである。HDTV放送を鮮明に映す薄型テレビや,インターネットに高速に接続する携帯電話機,自分が買ったコンテンツを丸ごと収録できる携帯型プレーヤーまで持っている消費者に対し,あっと驚く新機能を提案することは至難の業である。使わない機能をむやみに増やせば,むしろ非難の的になる。「これ以上の多機能化は迷惑」との声は,本誌が消費者を対象に4年前に実施したアンケート調査で既に上がっていた(関連記事1)。かの『イノベーションのジレンマ』でも紹介しているように,機能に対する需要が満たされると,製品の競争の軸は,信頼性,使いやすさ,そして価格へ移るのが世の常である。

とても参考になった 0
まあ参考になった 0
ならなかった 0
 投票総数:0
コメントに関する諸注意
(必ずお読みください)



コメントの掲載は編集部がマニュアルで行っておりますので、即時には反映されません。しばらくお待ちください。
記事中に誤りなど,編集部へのご連絡にはフッターのご意見/ご感想・お問い合わせをお使いください。
English
中文

最新号

最新号の目次
2月6日号から
特集

がんと闘う

医療の世界に、パラダイム・シフトが起ころうとしている。がんを超早期の段階で発見し、克服しようとする動きだ。エレクトロニクス技術にその牽引役としての期待が集まっている。 (続きを読む

定期購読のお申し込み 最新号を一冊買う

購読者限定記事ダウンロード

日経エレクトロニクスPremium定期購読者の方はこちら
日経エレクトロニクス定期購読者の方はこちら