「Tundra」ってのも環境車なんですか?
「Tundra」ってのも環境車なんですか?
大気中のCO2濃度の上昇を抑えるには,1)化石燃料の使用を大幅に減らし,2)代替エネルギー源を確保し,3)機械や設備の効率を格段に改善する必要があります。世界のCO2排出量の約18%を占める自動車にとっても,この三つの課題は重くのしかかっています。ただ,移動機械という性格上,エネルギー密度の高い化石燃料からの脱却は容易ではありません。燃料電池車は気体の水素ガスを,電気自動車は2次電池を使いますが,いずれもガソリンに比べるとエネルギー密度が低すぎて,航続距離が伸ばせないのが欠点です。
最近,トヨタ自動車常務役員の増田義彦氏による燃料電池車開発に関する講演を聞く機会がありました(「第2回 FC EXPOセミナー in 大阪」,11月29日)。自動車用の燃料電池の基本性能は各社の努力で着実に進歩しているが,水素ガスの貯蔵が難しく,航続距離が短いという問題をなかなか解決できない,と述べていました。そしてこの問題は自動車メーカーが個別に取り組むより,非競争領域として世界中の研究機関が協力して解決すべきと提案しました。これはつまり,燃料電池車の完成はまだまだ先のことになる,というメッセージであると筆者は受け取りました。
その前に増田氏は,石油の枯渇やCO2排出規制によって自動車用燃料は多様化しつつあり,これからはガソリンと軽油以外にバイオ・エタノール,各種合成燃料,CNG(圧縮天然ガス),水素,電気エネルギー(2次電池)などの利用が増えていくとしました。そして,燃料がどのように変わっても同社のハイブリッド技術は基盤技術として有用であり,「適時,適地,適車」というコンセプトでさまざまなエコ・カーを開発して行くとのことです。
さてこの講演を聞きながら,ちょうどその1週間ほど前に聞いたニュースを思い出しました。トヨタが米国テキサス州の新工場で大型ピックアップ・トラック「Tundra」の2007年型を生産開始したというニュースです。Tundraはご存知のように幅2m,全長5.8m,排気量は4.0Lから5.7Lというビッグなクルマです(関連記事)。日本人の目から見るとなんとも環境に悪そうなクルマに見えます。プリウスやレクサス・ハイブリッドなどで環境に優しいクルマづくりというメッセージを発信しているトヨタにとって,いくらなんでもこれはマイナス・イメージなのではないでしょうか。
もっともトヨタに言わせれば,この新型Tundraは米国製の競合車に比べると燃費がとても良いとのことで,いずれはハイブリッド車も検討しているとか。つまり,このクルマもトヨタにとってはある意味,「適時,適地,適車」に沿ったエコ・カーだと言うことなのでしょうか。うーん,LCA(life cycle assessment)的に考えても,なんとなく納得できないものを感じませんか。
ガイア理論の提唱者であるJames Lovelockが,「ガイアの復讐」(中央公論新社,2006年10月10日)という近著の中で,おもしろいエピソードを紹介しています。イギリスのケンブリッジで開かれた環境問題の会議で,CO2の低コストな固定化技術などさまざまな画期的環境対策技術が発表されました。その会議の最後に,ある有名な経済学者がこう言ったそうです。「(こうした新技術は)やればやるほど,かえって化石燃料の燃焼を増大させる結果を招くことにならないか。それが人間のやることの常だから」。
Tundraのことで,これ以上トヨタに皮肉を言っても,あまりフェアでないかもしれません。自動車メーカーは,顧客に選択肢を提供しているだけなのですから。これを買う,買わないという形で消費者が未来を選択しているのです。そして,よっぽどのことがない限り,消費者はエネルギー多消費型のライフスタイルを変えようとしません。それが人間のやってきたことの常ですから。


















