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今なぜ,「ミリ波」なのか

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2006/08/11 09:58
蓬田 宏樹(日経エレクトロニクス)

 HDMIやGビットEthernetなど,家庭にGビット/秒を超える高速インタフェースが登場しつつあります。それに伴い,これらを無線化するための技術開発が活発化してきました。その有力候補の一つに「ミリ波」があります。

 ミリ波通信は,60GHzや76GHzといったいわゆる「ミリ波帯」を使って無線伝送を行うものです。ここには免許無しで利用できる帯域が,日本や米国で7GHz幅,欧州では9GHz幅と非常に広く開放されています。広い帯域を使えることから,比較的単純な変調方式を用いた場合でも,2〜3Gビット/秒の高速無線インタフェースを実現できる能力を秘めています。

 しかしこれまで,ミリ波を使った家庭向けのアプリケーションはなかなか立ち上がらない状況にありました。その理由の一つに,「コストの高さ」が挙げられます。高周波の無線技術であるため,チップの製造技術に高コストの特殊なプロセスが必要だったり,特殊な受動部品やパッケージが必要だったりしました。送受信回路などの製造コストが高いため,用途が限定され,その結果量産効果も得られず,製造コストが高いままとなる傾向がありました。

「ミリ波」の常識が変わる

 今,その状況に変化が訪れています。CMOSプロセスでミリ波用送受信チップを実現できるようになりつつあることです。米IBM社や米Intel社,そして日本の複数の半導体メーカーが,CMOS技術によるミリ波用ICの研究開発に取り組んでいます。比較的安価なCMOSプロセスを利用することで,チップの製造コストが下がる可能性が出てきました。HDMIの無線化など,高い伝送速度が必要なアプリケーションの登場も,CMOS技術のミリ波への適用を後押ししています。

 CMOS技術は,これまで数多くの無線アプリケーションを花開かせる際に非常に重要な役割を果たしてきました。無線LANやBluetooth,最近では携帯電話,そしてGPSまでCMOS技術で送受信チップが実現され,送受信回路のコスト低減に寄与しています。さらに一歩踏み込んで,マイクロコントローラなどロジック回路との1チップ化を実現できるのも,CMOS技術の優れた点と言えそうです。その「CMOS化」の波が,いよいよミリ波領域まで到達してきました。日経エレクトロニクスの2006年8月14日号の特集記事「究極の無線通信,家庭へ」では,CMOS技術がミリ波領域に到達したことを背景に,ミリ波通信がどこまで適用範囲を広げ得るのか,そのポテンシャルと課題についてレポートしています。取材では,電波が直進しやすいといったミリ波ならではの技術課題を乗り越えるための,様々な取り組みを聞くことができました。自動車用レーダなどで注目を浴びているミリ波ですが,家庭向けの用途もじわじわと開拓されることになりそうです。

 実はこのミリ波通信は,日本では情報通信研究機構(NICT)などを中心に長い研究開発の歴史があります。今回の特集記事をまとめる中で取材させていただいた多くの技術者の方が,「ミリ波は,日本が世界をリードしている」と指摘していました。確かに,現在米IEEE802委員会で進められているミリ波による近距離無線規格の策定においては,評価手法などに関してNICTや沖電気工業などの貢献が非常に大きいと聞きます。

 「日本が強い技術であるならば,その市場が立ち上がるタイミングを逃すことなく,大きなビジネスチャンスとして世界市場での勝負を有利に進めて欲しい――」。それが,今回の特集記事に込めた我々なりのメッセージでもあります。非常に応用範囲の広い技術ですので,取材が至らなかった点もあるかもしれません。読者の皆様からのご意見ご感想をいただけますと幸いです。

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ユーザーからのご意見

■ミリ波通信の欠点を見ずに研究者の主張をうのみにしている記事が多いようである。
NICTよりもはるか昔の1960年代に,かつてNTT通研でミリ波通信の研究がされていた。光ファイバ通信との競争に負けたということでかたづけられていますが,その後,NTTの研究者は実用化にむけてのミリ波無線の研究をさらに進めていきました。しかし,大容量の無線通信がほかの方式で,かつ,より低い周波数で実現できるにあたって,ミリ波通信の研究を収束したのです。
部材のコストがネックではなく,ミリ波伝搬の欠点を克服できる通信方式が見つかっていない以上,かつてのミリ波通信と同じく,挫折する可能性は高いと思う。私自身は,1960年代にNTT通研でミリ波用半導体の研究をしていたものですので,その頃と今の状況は全く変わっていないことに,驚くばかりです。 (2006/08/14)

■家庭内での普及とは,何をさして言っているのか。
音声や映像の伝送を言っているのであれば,伝送される音声や映像が劣化しないのは当然のこととして,再生機器に影響を与えないことが必要です(機器から漏れるノイズや電源ラインに漏れるノイズ)。こういうことが考慮されないのなら,ある程度以下の価格帯でしか普及しないでしょう。
まあ,普及する頃には,全てデジタル化されているかもしれませんが,過去の財産(メディアに収録された音源など)を捨て去ることは無いだろうし,対応機器はまず出てこない。よって,機器の更新はしないとなることだってあり得ます。
現実にアナログのレコードやVHSは消え去っていません。(2006/08/14)

■ミリ波デバイスがCMOS技術により安価に実現できるのは非常に喜ばしい事と思うが,使いたいユーザーが本当に使いこなせるか,と言う疑問がわく。
(1)以前,WiFi用某有名メーカーのICを使用したが,「信号が通らない」と言うので基板を見たが,2.4GHz・5GHz帯に必要なアースがIC周辺に無い! 分厚いデータシートを見たが,RFに関する技術的記述は無いに等しく,メーカーに問い合わせたら,「評価ボード通りの配置・パターンで無いといっさい保証はしない」と言うのであきれてものが言えなかった。
(2)ミリ波デバイスメーカーが客先にデバイスを渡しても,データを再現できた客先はほとんど無く,そのフォローに追われる毎日と担当営業のぼやきとも諦めとも言えない話。ミリ波のハンドリングは経験が必要と思う。解決の方法は,信号を入れたらアンテナから電波が出るモジュール。誰でも使えるが,ミリ波を使いこなしているとは言い難いが,ミリ波がお茶の間に進出することを願ってやまない。(2006/08/11)

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