光ファイバは誰のもの?
竹中総務大臣主催の「通信・放送の在り方に関する懇談会」が大詰めを迎えている。この懇談会では数々の話題が注目を集めているが,大きな焦点の一つになりそうなのが両業界における「事業の水平分離議論」の行方であろう。例えばソフトバンクの孫正義社長は全国 6000万回線を光化するための提案として通信事業者の共同出資による「ユニバーサル回線会社」の設立をしてNTT東西が持つアクセス網の分離を提唱している。放送業界については「ハード・ソフトの分離」の是非が懇談会の議論の対象となっている。
2006年3月には,公開ヒアリングが実施されて,通信・放送事業者の代表者が顔をそろえ,自らの考えを主張した(懇談会の詳細はこちらを参照)。この中で,波紋を広げているのが,NTTの和田紀夫社長による「NTTは株主のものであって,国民のためのものではない」という趣旨の発言である(公開された3月22日開催の第7回会合議事録の55ページ)。孫社長からは「国民のものという発想のない社長が運営している会社に,21世紀のインフラ,国民のインフラを任せていいのだろうか」と切り込まれている。
もともとこの懇談会が始まる前まで私は,FTTHのユニバーサル・サービスを指向しているのがNTTで,ソフトバンクなどは採算性を重視するビジネス・ライクなエリア展開を計画していると思っていた。しかし,懇談会の議論を見る限り,NTTとソフトバンクは,完全に逆転した内容を主張しあっているかのような印象を受ける。実際にはソフトバンクのユニバーサル回線会社の提案は,裏には対NTTでいかに有利な競争条件に持ち込むか,というのがベースにはあると思う。しかし一般の目としては,光のアクセス網は国民のためのものではないというNTTに対し,NTTに依存する形でのFTTHの普及に疑問を感じざるを得なくなるだろう。
この議論を聞いていて不思議でならないことがある。ユニバーサル回線会社の設立提案に当たって,孫社長は月額690円で光のユニバーサル・サービスが可能という。NTTがドライカッパとして,つまりメタル回線を約1300円で月々貸している費用より安価である。これが本当であるならば,NTT再々編の以前の問題として,ADSLよりはるかに高額な負担となっているFTTHサービスの料金そのものに疑問が出てきてしまう。NTTには,月額690円という孫社長の試算に対する反論を聞きたいところである。
日経BP社では2006年5月19日に,東京・池袋のサンシャシンシティプリンスホテルにて,通信と放送の融合ビジネスを議論するシンポジウム「メディア コンバージェンス サミット2006」を開催します。詳しくはこちらを参照してください。


















