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SEDテレビが買えない

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2006/02/17 09:48
小谷 卓也(日経エレクトロニクス)

 時の流れと市場の変化は速いものである。約1年前,このコラムに「PDPはなくならない」というブログを書いた。液晶の大型化やリアプロの台頭に加え,PDPテレビ事業から撤退するという複数のテレビ・メーカーの発表が相次いだことなどで,PDPに対する逆風の論調が目立っていたころである。

 本当に逆風なのか,2005年の3月28日号の特集記事に向けた取材を進めた。このときの取材で薄型テレビ/パネル・メーカー各社が主張していたのは「今は薄型テレビの市場を伸ばす時期だ」という考えである。当時は,薄型テレビの市場が世界のテレビ需要の10%以下に過ぎず,互いの市場を奪い合うよりも,共に市場を伸ばすことの方が重要だという意識である。

 あれから早1年。薄型テレビ市場は大きな変化をみせた。多くのメーカーが「1年〜1年半ほど前倒し」と口をそろえるペースで,薄型テレビ市場が急拡大したのである。そのため,2006年に入りパネル・メーカー各社は相次ぎ大増産に踏み切ったり,工場稼働の前倒しを図ったりしている。

 薄型テレビ/パネル・メーカーの考えは,この1年で明らかに変わり始めている。薄型テレビへの買い替えが予想以上のペースで進んでいることで,薄型テレビの需要がCRTテレビの需要を上回る時期が,思いのほか早まりそうなためである。「共に市場を伸ばす時期」は早くも終わり,拡大する市場でいかに相手に先んじてシェアを奪うかに焦点が移っているのである。

 私の周りでも,薄型テレビに買い替える人が確実に増えてきた。現行のCRTテレビが壊れてきた,地上デジタル放送を見たい,など買い替えには色々な理由があるが,私自身は今のところこれといった動機はなく,一人暮らしの狭い部屋には大画面を置くスペースもない。しかし,私の買い替え意欲を一気に高めてくれそうなテレビがある。SEDテレビだ。周囲のディスプレイ技術者も一目を置くその画質の高さは,普段から表示技術を取材している私にとって,購買意欲を掻き立てられるものがある。

 SEDテレビについては,ほかの薄型テレビに対する価格競争力について疑問視する声が多い。もちろん価格は購買行動を決める重要な要素であり,安いに超したことはない。ただし,SEDテレビの場合は多少値が張っても買いたいと考える人は少なくないだろう。ある液晶パネル・メーカーの経営企画担当者は「オーディオ製品に高音質の高級機があるように,テレビにも高画質の高級機があってもいい。本格的に映像を楽しみたい人が,SEDテレビにお金をつぎ込む姿は想像に難くない」という。私の周りで薄型テレビを買った人に聞くと「画質には満足していないが,かといってほかに選択肢がない」という声が意外なほど多い。

 SEDテレビにとっての喫緊の命題は,価格競争力ではなく,むしろ発売時期の遵守(あるいは前倒し)ではないだろうか。前述した通り,薄型テレビへの本格的な買い替えの波が,思いのほか猛スピードでやってきそうだ。こうした中,SEDテレビの購買意欲を持った人が,いざ買い替えようとしたときに,買えない状況こそが最も恐れるべき事態といえるだろう。いったん,ほかの薄型テレビを買ってしまえば,少なくとも数年,長ければ10年以上所有し,そう簡単に次の買い替え行動に移るとは考えにくいからだ。

 SEDテレビは今のところ,2006年春に少量生産のパネルを用いた数量限定の販売を始め,2007年に本格的な販売に入る予定である。しかし,幾つかの情報を総合すると,若干後ろ倒しになる可能性もあるようだ。SEDという新規技術に対して,多少の開発の遅れを非難するつもりは毛頭ない。しかし,薄型テレビ市場の状況があまりにも急速に変化している中,少しの遅れが自らの首を絞めかねないことも事実である。2007年の量販店には,SEDテレビがズラリと並んでいることを期待したい。

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