お薦めトピック
- AD -
日経ものづくり雑誌ブログ

寝耳に水?−どうなる家電リサイクル

2006/02/16 20:37
吉田 勝=日経ものづくり
はてなブックマーク
Facebookでシェアする
Twitterでつぶやく

 
 「電気用品安全法」をご存じでしょうか。「旧電気用品取締法」を改正して2001年4月より施行されたものです。その目的は

 “電気用品の製造,輸入,販売等を規制するとともに,電気用品の安全性の確保につき民間事業者の自主的な活動を促進することにより電気用品による危険及び障害の発生を防止する”

となっています(第1条より)。この法改正によって,2001年4月よりPSEマークなるものが導入されました。検査の結果,国内で電気製品を製造・輸入・販売するための安全基準を満たしている事を示すというマークです。まあ,製品の安全性にお墨付きを付けるマークですね。
 電線や配線器具といった「特定電気用品」112品目は菱形のPSEマークを,家電製品を含むそれ以外の電気製品338品目は丸形のPSEマークを添付しなくてはなりません。


特定電気用品のPSEマーク
特定電気用品以外の電気用品のPSEマーク

 いま,このPSEマークが話題になっています。大ざっぱに言うと2006年4月1日以降,PSEマークのない家電製品は販売できなくなってしまうからです。電気用品安全法の施行後に製造された製品の多くはこのマークを取得していますが,問題は中古家電。当然,法律の施行前に造られた製品にはこのマークはなく,それらは商業的に販売できません(個人的な売買は認められている)。2001年の法施行の際は,いきなり販売禁止というわけにもいかないので,猶予期間を設けて販売を認めることになりました。製品によって猶予期間は7年,10年といったものもありますが,多くの家電製品のそれは5年間。つまり,その期限が2006年4月1日に迫っており,5年以上前の家電製品のほとんどは,もうすぐ販売できなくなるということなのです。

 最近になっていろんなメディアやサイトでも取り上げられるようになってきたので,この問題は既にご存じの方もいると思いますが,5年も前に施行されていた割にはこれまであまり知られていませんでした。経済産業省もあまり周知に力を入れていなかったようです。実は,恥ずかしながら私も最近になって知ったばかりです。

 中古家電をリサイクル販売していた業者にとってはかなり厳しい法改正です。特に,リサイクルが盛んなオーディオ販売業者はかなり危機感を抱いているようです。再販できなければ,再利用は部品や素材を取り出すしかありません。当面は仕入れが減るわけですから,廃業する業者も出てくるでしょう。
 影響があるのは業者だけではありません。消費者にもその余波は及びます。リサイクル業者は,再販売不可能なPSEマークのない製品の買い取りを拒否するようになるでしょう。既に一部の家電販売店は,引き取り終了の告知を出しています。
 そうなれば買い替えの際には,リサイクル料を払って破棄するか,スクラップ業者に引き取ってもらうしかありません。不法投棄が増える恐れもあります。

 確かに,昨年末に問題となった松下電器産業の石油ファンヒータのように,長く使ったために思わぬ品質問題が起こる可能性はあります。そういう意味では,古い製品が市場に出回るのを防ぎ「危険及び障害の発生を防止する」という効果はあるでしょう。経済的な側面から見れば,新製品が売れる余地が増えてメーカーにとってもメリットがあるのかもしれません。

 しかし,古いからというだけでひとくくりに“危険”としてしまう姿勢には違和感を覚えます(それも,十分に周知せずなんとなくこっそりという感じですし)。そもそも,法改正前の製品には,旧法の電気用品取締法に基づいてTマークやSマークといった政府による安全性のお墨付きがありました。Tマークなどは,特定の登録機関が政府に変わって安全確認したり,メーカーが自己検証した安全性をそれら登録機関が確認するものでした。TマークからPSEマークに移行して,安全基準が著しく厳しくなったわけではありません。Tマーク製品が特に危険というわけではないのです。

 この法改正の背景には,輸入品の自由度を拡大するためTマークのような政府によるお墨付きを廃し,メーカーや販売事業者,消費者などが安全性に責任を持つ「自己責任」の考え方があります。国は事前に安全性をチェックしないが,問題が起こった場合は回収や罰金を課すというものです。従って,PSEマークはメーカーが自主的に検査して添付できます。

 しかし,民間に任せきってしまう危険性は先の耐震強度偽装でも問題となりました。ものづくり立国を標榜する以上,ものを大切にする姿勢とともに,市場原理だけに頼らずに,安全性を確保するためのもう一歩踏み込んだ方策を期待したいところです。

とても参考になった 0
まあ参考になった 0
ならなかった 0
 投票総数:0
コメントに関する諸注意
(必ずお読みください)



コメントの掲載は編集部がマニュアルで行っておりますので、即時には反映されません。しばらくお待ちください。
記事中に誤りなど,編集部へのご連絡にはフッターのご意見/ご感想・お問い合わせをお使いください。
English
中文

最新号

日経ものづくり
2012年2月号から

【特集1】

使ってみたい材料30

材料を見つめ直すことで、これまで知られていなかった新たな可能性が見えてくる。(続きを読む


【特集2】
 設計標準化の進め方
 ──多様な要求に応え、造りやすく──

【特集3】
  ISO26262
 クルマの安全が変わる、設計のプロセスが変わる


《新連載コラムがスタート!》
  【ものづくり塾・製造コース】
  現場の「困った」を解決する からくりと治具

定期購読のお申し込み 最新号を一冊買う

編集部からのトピックス

定期購読者限定サービス

雑誌掲載記事の検索&PDFダウンロード
● 本誌記事を全文検索で探すことができます。
● 探した結果は,本誌記事とほぼ同じ体裁のPDFファイルとしてダウンロードできます。
● 1カ月あたり40ページ分までのダウンロードは定期購読者なら無料です。
アーカイブサービスとは
雑誌掲載記事の検索&PDFダウンロード

購読のご案内

毎月1日発行
年間購読料(税込み)
1年(12冊):13,200円
3年(36冊):28,600円
一部売価格(税込み): 1,400円

バックナンバー

2012年1月号
2012年1月号 特集 工場飛び出すロボット技術

新領域ロボットでは実際にどのような技術が求められているのか、ロボットやその要素部品の開発例を通じて見ていく。

2011年12月号
2011年12月号 特集 高効率エンジン

高効率エンジンの登場が相次いでいる。その開発現場では、「常識」を打ち破り、「限界」を超えるための闘いが繰り広げられている。

2011年11月号
2011年11月号 特集 医療機器への挑戦

医療機器の開発で最も難しいのは、使い手である医療関係者の要求を技術者がうまく理解すること。医療関係者の声に耳を傾け、要求を理解し、その期待に技術で応えた事例を紹介する。

雑誌バックナンバー
日経ものづくり定期購読キャンペーン