寝耳に水?−どうなる家電リサイクル
「電気用品安全法」をご存じでしょうか。「旧電気用品取締法」を改正して2001年4月より施行されたものです。その目的は
“電気用品の製造,輸入,販売等を規制するとともに,電気用品の安全性の確保につき民間事業者の自主的な活動を促進することにより電気用品による危険及び障害の発生を防止する”
となっています(第1条より)。この法改正によって,2001年4月よりPSEマークなるものが導入されました。検査の結果,国内で電気製品を製造・輸入・販売するための安全基準を満たしている事を示すというマークです。まあ,製品の安全性にお墨付きを付けるマークですね。電線や配線器具といった「特定電気用品」112品目は菱形のPSEマークを,家電製品を含むそれ以外の電気製品338品目は丸形のPSEマークを添付しなくてはなりません。
いま,このPSEマークが話題になっています。大ざっぱに言うと2006年4月1日以降,PSEマークのない家電製品は販売できなくなってしまうからです。電気用品安全法の施行後に製造された製品の多くはこのマークを取得していますが,問題は中古家電。当然,法律の施行前に造られた製品にはこのマークはなく,それらは商業的に販売できません(個人的な売買は認められている)。2001年の法施行の際は,いきなり販売禁止というわけにもいかないので,猶予期間を設けて販売を認めることになりました。製品によって猶予期間は7年,10年といったものもありますが,多くの家電製品のそれは5年間。つまり,その期限が2006年4月1日に迫っており,5年以上前の家電製品のほとんどは,もうすぐ販売できなくなるということなのです。
最近になっていろんなメディアやサイトでも取り上げられるようになってきたので,この問題は既にご存じの方もいると思いますが,5年も前に施行されていた割にはこれまであまり知られていませんでした。経済産業省もあまり周知に力を入れていなかったようです。実は,恥ずかしながら私も最近になって知ったばかりです。
中古家電をリサイクル販売していた業者にとってはかなり厳しい法改正です。特に,リサイクルが盛んなオーディオ販売業者はかなり危機感を抱いているようです。再販できなければ,再利用は部品や素材を取り出すしかありません。当面は仕入れが減るわけですから,廃業する業者も出てくるでしょう。
影響があるのは業者だけではありません。消費者にもその余波は及びます。リサイクル業者は,再販売不可能なPSEマークのない製品の買い取りを拒否するようになるでしょう。既に一部の家電販売店は,引き取り終了の告知を出しています。
そうなれば買い替えの際には,リサイクル料を払って破棄するか,スクラップ業者に引き取ってもらうしかありません。不法投棄が増える恐れもあります。
確かに,昨年末に問題となった松下電器産業の石油ファンヒータのように,長く使ったために思わぬ品質問題が起こる可能性はあります。そういう意味では,古い製品が市場に出回るのを防ぎ「危険及び障害の発生を防止する」という効果はあるでしょう。経済的な側面から見れば,新製品が売れる余地が増えてメーカーにとってもメリットがあるのかもしれません。
しかし,古いからというだけでひとくくりに“危険”としてしまう姿勢には違和感を覚えます(それも,十分に周知せずなんとなくこっそりという感じですし)。そもそも,法改正前の製品には,旧法の電気用品取締法に基づいてTマークやSマークといった政府による安全性のお墨付きがありました。Tマークなどは,特定の登録機関が政府に変わって安全確認したり,メーカーが自己検証した安全性をそれら登録機関が確認するものでした。TマークからPSEマークに移行して,安全基準が著しく厳しくなったわけではありません。Tマーク製品が特に危険というわけではないのです。
この法改正の背景には,輸入品の自由度を拡大するためTマークのような政府によるお墨付きを廃し,メーカーや販売事業者,消費者などが安全性に責任を持つ「自己責任」の考え方があります。国は事前に安全性をチェックしないが,問題が起こった場合は回収や罰金を課すというものです。従って,PSEマークはメーカーが自主的に検査して添付できます。
しかし,民間に任せきってしまう危険性は先の耐震強度偽装でも問題となりました。ものづくり立国を標榜する以上,ものを大切にする姿勢とともに,市場原理だけに頼らずに,安全性を確保するためのもう一歩踏み込んだ方策を期待したいところです。


























