放送と通信の融合ってこんなこと
「放送と通信の融合」をテーマにした制度改革について,各種の懇談会や研究会で検討が進められている。筆者もこうしたテーマには興味があるので,両サービスが融合することで映像の見方がどう変わるのか,考えてみた。
私は,放送と通信が融合することで実現する魅力的なアプリケーションの一つに,いわゆる「TV Anytime Anywhere」があると思っている。見たい番組あるいは見たいシーンを,いつでもどこからでも視聴できるようにしようというコンセプトである。
これを具現化するものとしては,放送業界は「サーバー型放送」の実用化に向けた準備を進めている。これは,放送されたデジタル番組をいったん受信機に内蔵したHDDに蓄積,メタデータで見たい番組やシーンを検索して再生するというもの。HDD内に見たい番組が蓄積されていないケースでも,通信回線経由で外部のサーバにアクセスして視聴できるようにする。ここでカギになるのは,見たい番組・シーンを検索するのに使うメタデータと,通信や放送を組み合わせて提供されるサービスの視聴条件を柔軟に設定できるようにする新しいCAS技術である。これらの仕組みで,テレビの視聴スタイルはかなり変わる。
ところが最近は,このサーバー型放送が「通信と放送を融合したサービス」の一つの通過点に過ぎないのでは・・・,と感じるようになってきた。この仕組みを使えば,確かに放送事業者が提供する番組については,いろんな接し方が可能になる。しかし,テレビで見たい映像は,必ずしも放送事業者の番組だけではない。放送事業とは無関係に配信された動画ファイルもあれば,自分で撮影した映像もある。私ごとで恐縮だが,自分自身で故郷の祭りの模様を映像で提供するサイトを持っているし,他人が運営する同様のサイトをよく覗く。どうせならば,こうしたありとあらゆる映像から見たいものを検索できて,簡単にテレビで楽しめるようになった方がよい。
テレビは放送を受信する端末であるとともに,これからは家庭内ネットワークにも外部のブロードバンドにもIP網で接続されると見込まれる。そうなるとテレビには,(1)テレビに内蔵したHDDやネットワークでつながるすべてのメディアから,あらゆる映像を検索して一覧表示するエンジンを用意する,(2)その一覧表にはそれぞれの映像ごとに視聴条件が記述されるようにして,視聴者は条件に合ったものを選ぶと,それに合う形で再生が可能になる――というテレビの視聴スタイルが生まれる。視聴条件としては,有料・無料という単純なものだけではなく,視聴可能期間や広告視聴強制の有無,コピーの可否など,いろいろある。この条件設定が,ビジネス・モデルをも規定する。
こうした仕組みを作る場合に必要になるのは,放送・通信事業者/IT業界/家電など業界を横断する形で「映像の内容の記述する仕組み」「視聴条件を記述する仕組み」「その条件に合わせて再生を制御する仕組み」を作ることである。放送と通信の融合というと,NTTやNHKのあり方あるいは,通信や放送関連法規の改正などに議論が向きがちだが,本当に重要なことは,上に挙げた3項目に関する業界を横串にするようなプラットフォームをどう作るのか,ということではないだろうか。


















