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日米あべこべ考

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2006/01/30 10:04
今井 拓司(日経エレクトロニクス)

 「CES」。こう書くと,日本ではほぼ間違いなく「セス」と読む。実際,「2006 International CES」に参加して,多くの日本人がこう呼ぶのを耳にした。ところが米国では違う。「シーイーエス」なのである。テレビ番組でも再三こう伝えていたので,恐らく間違いないだろう。似たような例は他にもある。毎年春に開催される放送関連の展示会「NAB」。日本では「ナブ」,米国では「エヌエービー」だ。米国ではいつもアルファベットのまま読むのかといえば,さにあらず。Graphical User Interfaceの略称である「GUI」を,米国人は「グイ」と呼ぶのに,日本ではそう口にする人に会った憶えがない。略語の読み方が,日米でことごとく反対なのである。一体どういうことなのか。

 そんなことを考えていたせいか,先日の米国出張では,やたらと日米の違いに目が行った。特に驚いたのが,米国の携帯電話機の小ささだ。米国人は体が大きいから,日本と比べて大振りの製品が売れる——私はずっとそう信じていたし,少なくとも何年か前にそれは真実だったと思う。今では必ずしもそうではないらしい。米国にいる間,手のひらに隠れそうな携帯電話機で話し込む大柄な姿をそこら中で見かけた。私が借りた米国向けの携帯電話機は,日本でいつも利用している携帯電話機が恥ずかしくなるほどの小ささだ。電話だけではない。例えばカーナビ。CESの会場では,小さな画面が付いた,持ち運び可能な製品が花盛りだった。ソニーがフラッシュ・メモリを内蔵する小型のカーナビを投入するのも,こうした市場の盛り上がりを受けてのことだろう(Tech-On!関連記事)。

 価格に対する感覚も,大分異なるようである。東芝がこの3月に発売するHD DVDプレーヤの価格は499.99米ドル。私をはじめ小誌の日本側の記者は,これには相当驚いた。ここまで値段が低ければ,相当売れるんじゃないだろうか。ところが,当社のシリコンバレー支局に勤務するPhil Keys記者の意見は違った。まだまだ高いというのである。Phil曰く,「アメリカ人は,あの値段じゃほんの一部の人しか買わないよ」。

 日米で異なる感覚の,どちらが正しいということは一概に言えない。冒頭の略語の読み方など,要は通じればいいのである。日本には日本のやり方,米国には米国の流儀がある。それでいいじゃないか。ただし,世界市場を相手にした製品の作り方という視点を持ち込むと,ちょっと話が変わってくる。製品の大きさや値段に対するとらえ方は,どうやら米国流が世界標準のようだ。実際,このところ米国メーカーは,小ささ・薄さや安さが特徴の製品で,世界でヒットを飛ばしている。米Apple Computer, Inc.の音楽プレーヤ「iPod nano」や,米Motorola Inc.の携帯電話機「RAZR」などである。

 どうにも腑に落ちないのは,小型の端末にしても,安価な製品にしても,かつては日本メーカーの十八番だったことだ。「安くて小さい製品が得意なのは,日本と米国のどちらのメーカーですか」。この問いに対して,昔の日本人は間違いなく日本と答えたにはずである。少なくともバブル期以前には。

 現在の日本メーカーの凋落ぶりを嘆く声は多い。苦境を脱する策は,次から次へと現れる。そのいくつかは,理屈ばかりが先行し,実践上は空回りしているように見える。そんなときに必要なのは,自らの原点に立ち返ることではないだろうか。

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