2014年11月に開催した日経BP社主催セミナー「半導体ストレージサミット2014~エンタープライズ分野の主役に躍り出たフラッシュメモリー~」から、テックバイザージェイピーのチーフコンサルタントである栗原潔氏氏の講演を、日経BP半導体リサーチがまとめた。今回から3回にわたって紹介する。(日経BP半導体リサーチ)

 エンタープライズ向けストレージの市場規模は、これから先も堅調に拡大していくことは想像に難くない。長期的な動向(メガトレンド)としては、コンシューマリゼーション、仮想化、モバイル、クラウド、ソフトウエア定義型、ビッグデータ、が挙げられよう(図1)。ここではまず、そのうちのコンシューマリゼーション、ソフトウエア定義型、ビッグデータの3つについて解説する。

図1●エンタープライズストレージ周辺のメガトレンド
図1●エンタープライズストレージ周辺のメガトレンド
出典:テックバイザージェイピー(以下同)

産業分野と消費者分野の位置付けがひっくり返った

 コンシューマリゼーションとは、産業分野と消費者分野の位置付けが、過去と現在とでひっくり返っている現象を指す。野村総合研究所では「産消逆転」と呼んでいる。

 以前は新しい技術が出てくると、まず企業や産業などエンタープライズ分野で普及してから、安い価格帯のものが出てきて消費者分野に普及するという形が一般的だった。しかし最近は、最新技術はまず消費者分野に入ってから企業に展開されていく形が増えてきている。典型的なのは、スマートフォンやタブレット端末である。ソーシャルメディアのようなものも、まずはコンシューマー市場で広まった後に、それを企業がどのように活用するかといった話が出てきた。

 技術の個別要素だけを見ると、企業内で使われているものよりも消費者向けに使われているものの方が先を進んでいることはよくある。その理由は、あらためて言うまでもないが、例えば半導体やソフトウエアなどは作れれば作るほど安くなるため、大量生産でコスト効果を出すせるからである。

 私は業界アナリストとして、あるベンダーや、製品あるいは製品カテゴリーなどがどれぐらい伸びるかを考える上で、コンシューマリゼーション度、つまり消費者技術をどの程度活用しているかを重要なポイントとしてみている。例えばNANDフラッシュのMLCは、個別要素として見れば信頼性が低く、SLCに比べて全くエンタープライズ向けではない。だが、コンシューマー市場で大量生産されてどんどん安くなっていけば、個別要素としては少し不安であっても、ソフトウエアで付加価値を与えることでエンタープライズ市場で使えるものになっていく。

 ベンダーに対しても同じことが言える。エンタープライズ向けのITベンダーが勝ち残るためには、コンシューマー市場向けの要素技術で普及しているものを基にして、その価格性能比や安定供給というメリットを生かしながら、企業で使うに堪える信頼性やセキュリティーなどの付加価値を加えていくことが必要になる。

 ポイントは、コンシューマー向けとエンタープライズ向けのいいとこ取りをすることだ。特に、コンシューマー向けの要素技術をどう使っていくかが、先を読む上で非常に重要である。