2014年3月に開催した日経BP社主催セミナー「世界半導体サミット@東京 ~IoT時代の半導体成長戦略~」から、アーム 代表取締役社長 内海弦氏の講演を日経BP半導体リサーチがまとめた。今回は3回連載の最終回である。前回の第2回ではIoTのポテンシャルを発揮させるための重要要素である小型化やセキュリティーを紹介した(第1回第2回)。今回は重要要素である、IoTの開発における標準化の必要性や、開発コミュニティづくりを説明する。(日経BP半導体リサーチ)

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共通言語としての標準化


 IoTにおける標準化の是非や、標準化するとしてもそれは本当にオープンなものなのかという議論もある。例えばAndroid OSを使っていたらオープンかというと、それは違う。アプリケーションはバイナリーの形で流通するが、セットごとにシステムアーキテクチャーは異なるため、バイナリーで互換性が保たれる部分はほんの少しにすぎない。

 一方、標準化した方がいい点もある。例えばARM系プロセッサーの場合、カーネル自体は共通に近い形になるよう最適化することによって、アーキテクチャーやセットが違っても提供できるようになっている。さらに、Linux系のさまざまなバージョン、あるいはサポートベンダーによる実装に対して、根幹の技術を共通化することでコストを抑えられる上、最適化しやすくなり、パワー効率も上げられる。ハイパースレッティングなどのバーチャライゼーション用ソフトウエアも共通化して共有する。そういった部分における標準プラットフォームとしても、ARMプロセッサーは適している。

 そのほか、我々はZigBeeやOMAといったさまざまな規格に参加し、プロセッサーベンダーとして注意したいところや、必要と思われるところには最大限のサポートを行っている。

 さらに、「Sensinode」という技術の提供も始めた。同技術はフィンランドSensinode社の買収により、獲得した。これはIoT向けの技術だが万能ではなく、これがなければIoTが成り立たないというわけではない。しかし、IoTの浸透と拡大におけるかなりの部分の助けになるものだ。