2014年3月に開催した日経BP社主催セミナー「世界半導体サミット@東京 ~IoT時代の半導体成長戦略~」から、アーム 代表取締役社長 内海弦氏の講演を日経BP半導体リサーチがまとめた。今回から3回にわたって紹介する。(日経BP半導体リサーチ)

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 本稿では、IoT(internet of things)のポテンシャル、そして、そこで英ARM社が関係している部分、つまりARMコアがどのように役に立つのかを説明する。

 まず、ARM社の特徴について簡単に紹介しよう。ご存じの通り、ARM社は半導体製品を製造・販売するのではなく、開発したプロセッサーやシステムIP、ソフトウエアツール、物理IPといったものを半導体ベンダーにライセンスする形を取る。そして半導体ベンダーが半導体チップを製造してセットメーカーに販売し、セットメーカーはそれを使ってスマートフォンなどの機器を作る。これが、我々のビジネスモデルである。

 ARMプロセッサーの出荷数は、2013年度で100億個、累積で500億個である(図1)。この勢いで伸びていくと、恐らく2020年度には累積で1500億個の出荷数になる。つまり、ARM系チップが1個以上搭載されている半導体製品もそれだけの数、出ることになる。さらに、我々は350社以上の半導体ベンダーやセットメーカーなどにライセンスを行っており、ライセンス数としては1000以上が既に採用されている。

図1 ARMプロセッサーの出荷数量
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 垂直統合型で半導体を作っている最大手ベンダーの売り上げは約5兆円。対して、ARM社はプロセッサーコアのライセンスだけなので売り上げが1000億円しかない。これが良いか悪いかではなく、我々は共存共栄型で、水平に分業した半導体作りのプロセッサー開発部分を主に肩代わりしているという位置付けである。この特徴は、IoTの世界においても有利であると考えている。