2014年3月に開催した日経BP社主催セミナー「世界半導体サミット@東京 ~IoT時代の半導体成長戦略~」から、伊仏STMicroelectronics社 Executive Vice President Analog, MEMS & Sensors Group  Benedetto Vigna氏の講演を日経BP半導体リサーチがまとめた。今回から3回にわたって紹介する。第1回の今回は、センサーについて過去数年の間で起こった変化を紹介する。(日経BP半導体リサーチ)

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 MEMSの歴史で最も重要なものは日本から生まれている。以前MEMSは、自動車分野および医療分野での利用に限られていた。そんな中、任天堂がMEMSを家庭用ゲーム「Wii」に搭載することを決断した。同社のビジョンなしには、そして、日本の顧客のサポートなしには、MEMSがこれほど世界に知られることはなかっただろう。その後、任天堂の動きを追って、世界各地で、例えばスマートフォンなどにMEMSを搭載し始めたのである。

 もともと、大規模にMEMSの採用が始まったのは日本である。従って、日本は、私にとって非常に意義のある場所なのだ。

 外の世界で何が起こっているのかを感知するセンサーは、IoTにおいて必須のものである。本稿では、MEMSセンサーのIoTにおける貢献や課題について、三つに分けて連載する。

 第1回の今回は、過去数年の間に世界で起こった動きと傾向について紹介する。我々STMicroelectronics社をはじめ他のプレーヤーは、センサーの価格を下げてきた。センサーが高価なものであればIoTは広がらないし、多くのセンサーを世界に展開することもできない。コストは重要だ。

 連載第2回では、アプリケーションの種類を紹介する。IoT時代のアプリケーションとはどのようなものか、そして技術的な課題と技術以外の課題についても示す。

 連載第3回では、センサーが世の中をどのように変える力を持つのか、そしてST社が今、どのような位置にいて、どんな意図を持っているかについて説明する。

センサーは人と外の環境をつなぐ橋渡し


 まず、センサーの歴史から振り返ってみよう。同時に、日本が果たした役割と重要性についても触れる。

 センサーは非常に重要である。センサーがなければ人間は感じたことを定量化できない。センサーは人と外の環境をつなぐ橋渡しの役割を担っているのである。そして今後、センサーは、その橋渡しの役割がこれまで以上に重要になっていく。

 2005年からの約10年間で、センサーは世界各地でさまざまなものに搭載されるなど、より一層展開が広がっている。今ではパソコンはもちろん、携帯端末など、多くのものにセンサーが搭載されている。

 10年前、携帯端末に搭載されていたセンサーといえば、マイク程度だった。しかし今や、多くの人が持っている携帯端末には、加速度センサーや角速度センサー、コンパス、近接センサー、タッチセンサーなど、さまざまな異なるセンサーが搭載されている。

 その中で我々ST社や他のプレーヤーがやったことは、センサーの小型化である。センサーの原型といえるものは、数百年前に開発された。当時は非常に大きなものだったが、時を経て小さくなってきた。図1は、加速度センサーの歴史を示している。これにより、加速度計から加速度センサーへと進展を遂げていることが分かる。

図1 加速度センサーの進化
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