2014年3月に開催した日経BP社主催セミナー「世界半導体サミット@東京 ~IoT時代の半導体成長戦略~」から、ルネサス エレクトロニクス 執行役員常務 大村隆司氏の講演を日経BP半導体リサーチがまとめた。今回は3回連載の最終回。第2回では、賢いクルマが実現するための3項目のうち、(1)クラウド(IT)情報を紹介した。今回は残る2項目、(2)人や物体をリアルタイムで認識し、(3)走る・曲がる・止まるという車載制御を紹介する。(第1回第2回)(日経BP半導体リサーチ)

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(2)リアルタイム認識:人や物体を捉える


 賢いクルマが実現するための3項目のうち、前回はクラウド(IT)情報を紹介した。続いて、今後のクルマにおける人や物体のリアルタイム認識の重要性を説明する。

 WHOの報告によると、世界の交通事故死者数は年間124万人に上る。特に、中国やインドなどの新興国は深刻だ。日本はかなり減っているとはいえ、年間で約4000人の方が交通事故で亡くなっている。

 しかも、高齢者の割合が増えているという。さらに、高齢の運転者数も増加していく。従って、高齢者に優しいクルマ、ヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)が必要になるのである。その解決のためのロードマップとなる、運転支援システムの市場動向を見てみよう(図1)。

図1 運転支援システムの市場動向
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 オートクルーズ機能やレーンキープ機能は普及が進んでいる。駐車が非常に簡単になるサラウンドビュー機能は搭載車が多くなってきた。さらに最近、クルマが何かを検知すると止まる自動ブレーキングも浸透してきた。

 次世代に向けては、衝突回避のためにブレーキングだけではなく、ハンドルを少し切るステアリングにより、空いているところを見つけてクルマを逃がすという機能が検討されている。さらに、法規制の整備が必要になるものの、2020年以降、まずは特別な区間や高速道路などから徐々に、高度自動運転や自律運転などができるようになるだろう。

 こういったシステムを開発していくためには、ステレオカメラやレーダーなど多くのものでセンシングして、認識・判断し、制御することが必要になる(図2)。

図2 安全運転支援システムに向けた取り組み
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