2013年6月28日に日経エレクトロニクスが主催したセミナー「NE先端テクノロジーフォーラム 次世代パワー半導体のインパクト」(協賛:インフィニオン テクノロジーズ ジャパン)から、インフィニオン テクノロジーズ ジャパン 代表取締役社長の森康明氏の講演を、日経BP半導体リサーチがまとめた。今回はその第2回(第1回)。
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 パワー半導体の市場は今後、ますます広がっていく。インドのような新興国では、インバータを使ってないエアコンがまだ80%もあるという。こうした市場に対しては、性能だけでなく、コスト競争力のあるパワー半導体を作っていくことが重要である。そのキーテクノロジーとなるのが、300mmウエハーの適用だ。

 図5に当社初のパワー半導体用300mmウエハーを示した。オーストリア・フィラッハ工場でつい最近、製造したものである。当社は2008年に200mmウエハーによるパワー半導体の生産を始めたが、その翌年の2009年に、当社の技術者たちは次に何をすべきかというブレーン・ストーミングを始めた。2009年はちょうどリーマン・ショックの直後で、たいていの提案は却下される雰囲気の中だったが、これだけはやっておこうということで「パワー300mmプロジェクト」が始まった(図5)。

図5●パワー半導体の生産に300mmウエハーを適用
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長期トレンドを見据えて300mm化

 2008年に200mmファブがようやく立ち上がったばかりだったが、すぐに300mmへの移行を目指したのは、先に述べたメガトレンドに対する認識があったからだ(図6)。このままでは、すぐにキャパシティーが足りなくなる。200mmから300mmへ大口径化すれば、1枚のウエハーから取れるチップ数が増えて供給が安定し、コストも下げられる。それが市場を広げる上で重要だと我々は考えた。

図6●長期的な視点から大口径化を重視
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 その後、試験ライン(パイロット・ファブ)をフィラッハに立ち上げて研究を重ね、ほぼ1年以内に社内認定済みの300mmウエハーを作れるようになった。「CoolMOS」という名称で製品化し、数カ月後には最初の顧客から認定を得た(図7)。「CoolMOS C3」と「CoolMOS C6」と呼ぶ2種類の低耐圧品の出荷を既に開始している。

図7●顧客からの認定を取得済み
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