2013年6月28日に日経エレクトロニクスが主催したセミナー「NE先端テクノロジーフォーラム 次世代パワー半導体のインパクト」(協賛:インフィニオン テクノロジーズ ジャパン)から、インフィニオン テクノロジーズ ジャパン 代表取締役社長の森康明氏の講演を、日経BP半導体リサーチがまとめた。今回から3回にわたって紹介する。 ______________________________________________________________________________

 私たち半導体産業に影響を与える最近の重要なトレンドを図1に示した。一番大きいのは、自動車の環境対応である。先進国だけでなく中国などでも環境規制が厳しくなってきた。こうした規制に対応するには、半導体、特にパワー半導体が不可欠である。実際、この分野での需要は急増しており、パワー半導体の売り上げは自動車産業の成長率の2倍以上のペースで伸びている。

図1●半導体産業の4大トレンド
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 2番目は再生可能エネルギー。この分野でもパワー半導体が活躍しており、例えば風力発電の大型ファンの中で、本当に重要な役目を担っているのは半導体を用いたインバータである。

 3番目はインターネットなどの情報通信分野。最近のインターネットのデータセンターは非常に大規模で、建設するときも冷却水の水源や発電所の近辺であることが重視される。そして、もちろんサーバー用の低消費電力の半導体だけでなく、各種の電力用半導体が重要な役割を担う。データセンターを建設するに当たり、最近は米Facebook社のようなオペレータ企業と我々半導体メーカーが直接話をする機会が増えてきた。電源用とロジック用のチップを一体設計し、最適なシステムを構築するためである。

 4番目のトレンドは、これまで発展途上国と呼ばれていた国々がどんどん発展してきたことだ。私は数週間前にインドに行ったが、交通手段として自転車からオートバイへの移行が進んでいた。6人乗りのオートバイなども走っていたが、これからは低価格の自動車のニーズが大きくなると予想される。その場合、初めから環境対応を考えて、できるだけ自動車の電動化を進めるべきだろう。そのためにもパワー半導体は重要である。

多岐にわたる応用分野

 パワー半導体は発電や送電だけでなく、さまざまな利用シーンがある(図2)。ゲームやテレビなどの家電からパソコンやサーバー機、LED照明、HEV(ハイブリッド車)、CAVと呼ばれる建設機器などに至るまで、応用分野は幅広い。他にも電車などの鉄道分野や、太陽電池や風力発電などの再生可能エネルギー分野がある。

図2●パワー半導体のさまざまな利用シーン
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 効用の大きさはそれぞれの用途によって異なるが、パワー半導体をうまく利用すれば全体で30%ぐらいの省エネ効果が期待できる。