2013年2月6日に日経BP社が主催したセミナー「世界半導体サミット@東京 2013 ~クラウド&スマート時代への成長戦略~」から、ファウンドリー大手の米GLOBALFOUNDRIES社のCEOを務めるAjit Manocha氏の講演を日経BP半導体リサーチがまとめた。今回はその第2回(第1回)。
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 半導体業界では今、どのようなダイナミックな動きが起きているのだろうか。現在、世界の人口は70億人ほどである。これに対し、携帯電話機の保有台数は約60億台、インターネットのユーザーは約20億人に達している(図1)。携帯電話サービスの登録数は増加を続けており、2011年には人口100人当たり90近くを占めるに至っている。

図1●モバイルの時代が到来
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 こうした状況は、半導体の消費動向にどのような変化をもたらしているのだろうか。2012年には、携帯電話機向けの半導体消費量が(タブレット端末などを除く)標準パソコン向け半導体消費量にほぼ追いついた(図2)。2013年以降は、携帯電話機向けが標準パソコン向けをしのぎ、その差は広がっていく見通しである。携帯電話機向けとタブレット端末向けなどを合わせると、標準パソコン向けとの差はますます大きいものとなる。すなわち、モバイル機器こそが半導体消費のドライバ(原動力)となっているのだ。

図2●半導体消費を牽引
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 スマートフォンやタブレット端末に代表されるモバイル機器では、搭載されるプロセサやカメラ、ディスプレイ、ビデオ・グラフィックスなどの性能が向上の一途をたどっている(図3)。この結果、搭載される半導体の動作速度や消費電力、フォームファクターに関する要求は厳しさを増している。これに応える技術を、次々と盛り込んでいかなければならない(図4)。

図3●モバイル機器にさまざまな新機能が付加されていく
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図4●先端技術の投入が求められる
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 もう一つ特筆すべき点として、パソコンなどのコンピューティング機器に新技術が導入される時期と、モバイル機器に同様の技術が導入される時期の差が縮まっていることがある。従来は、両者の間には2年ほどの時間差があった。各種のモバイル機器が台頭するのに伴って、その差はずっと小さくなってきている(図5)。

図5●モバイル機器にもいち早く新技術が導入されるように
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先端プロセスの需要が急拡大中

 加えて、モバイル機器を対象とする場合には、新技術を非常に速いペースで立ち上げていかなければならないという特徴がある。何百万台、何千万台という数量が一挙に出荷される市場だからだ。

 そこで、我々のようなファウンドリーにとっては、技術世代の移行を加速するとともに、十分な生産能力とコスト競争力を実現する製造歩留まりの達成が至上命題となっている。ファウンドリー業界全体では、45nm世代以降の先端プロセス関連の売上高は2011~2016年に年率37%のペースで増えると予測されている(図6)。ファウンドリー市場全体の伸びは年率8~10%と予測されているから、先端プロセスがいかに大きな市場機会を生んでいるかが分かるだろう。我々にとっては、この領域で他社に先行していくことが重要になる。

図6●先端プロセスに大きな需要
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 モバイル機器向けのプロセサに限っても、2016年までに予想される需要に応えるためには、32nm世代以降の生産能力を毎年60万枚(300mmウエハー換算)ずつ増やさなくてはならない、との試算がある(図7)。スマートフォンやタブレット端末向けの先端半導体の需要は、これほどまでに大きいのだ。

図7●生産能力を速いペースで高めていく必要がある
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