2013年2月6日に日経BP社が主催したセミナー「世界半導体サミット@東京 2013 ~クラウド&スマート時代への成長戦略」から、半導体メモリ大手の米Micron Technology社のChief Executive Officerを務めるMark Durcan氏の講演を日経BP半導体リサーチがまとめた。今回は3回連載の最終回。第1回はこちら、第2回はこちら。 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 近年、メモリ業界を取り巻く状況は大きく変化している。一例を挙げれば、製造装置、デバイス、機器のいずれの業界でも、プレーヤーの数が以前に比べて激減している(図1)。

図1●市場プレーヤーの数が減少
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 この状況を、我々はチャンスだと受けとっている。なぜなら、少数の顧客やサプライヤーとの関係を従来に比べて強化できるからだ。その分、我々自身もより大きな付加価値を顧客に提供できる存在となることを求められる。単に提供するメモリの容量を増やしていくだけでは不十分であり、メモリのさまざまな属性の価値を高めていく必要がある。こうした観点から、我々は顧客やファブレス企業、さらにはファウンドリーや材料メーカーなどと戦略的な関係を築き、顧客が本当に望むメモリ技術を提供できるように努めている(図2)。

図2●顧客視点のソリューションを提供していく
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 とりわけ重要なことは、顧客と我々が互いにスキルや技術を共有し、顧客が抱える問題の解決につなげていくことである。単にDRAMやNANDフラッシュ・メモリなどの既存メモリを組み合わせるだけではなく、顧客のさまざまなニーズをくみ取った統合ソリューションを提供できるメモリ・メーカーが求められているのだ。

 メモリの応用範囲はこの先ますます広がっていく見通しであり、それぞれの応用に応じて求められる機能や特性は大きく異なる(図3)。例えば自動車分野では、基本的な機能の他に、ネットワーク設計にかかわる機能、さらにはサービスや寿命、耐久性などが重視される。グラフィックス分野であれば、メモリの帯域幅が非常に重要だし、ネットワーク機器では高信頼性や低レイテンシが求められる。モバイル分野では、消費電力やコスト、フォームファクターが重視される。メモリ・メーカーとしては、このように分野ごとに異なる要求を満たし、それぞれの市場で商機をつかまなくてはならない。

図3●多様化するメモリの応用
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