ソーラーポンプシステムの機器構成(出所:農業・食品産業技術総合研究機構)
ソーラーポンプシステムの機器構成(出所:農業・食品産業技術総合研究機構)
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連続運転(上)と間欠運転(下)の比較。間欠運転によって蓄電池の電圧低下が抑制される(出所:農業・食品産業技術総合研究機構)
連続運転(上)と間欠運転(下)の比較。間欠運転によって蓄電池の電圧低下が抑制される(出所:農業・食品産業技術総合研究機構)
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 農業・食品産業技術総合研究機構は8月10日、太陽光発電を用いた揚水システムを開発したと発表した。傾斜地のかんきつ園を想定し、高所にあるタンクに水を汲み上げる電源に太陽光発電と蓄電池を活用する。タンクに揚水し、高低差を利用してミカンなどかんきつ類の根元にチューブでゆっくり放水する。

 こうしたチューブによる「点滴かんがい」を傾斜地で行う場合、従来、トラックで高所に水を運搬したり、大がかりな揚水施設を整備したりする必要があった。新開発のソーラーポンプシステムを利用することで、低コストで容易に、高所に水源を確保できるという。

 同システムは、小規模な太陽光発電システムと小型ポンプを組み合わせ、高所に設置したタンクに揚水し、自然圧力でかん水することが特徴。かん水しない時間にも少しずつ水を汲み上げておくことで、定期的に自然圧力で一気にかん水できる。また、蓄電池の劣化を抑えるため、15分揚水して、30分止める間欠運転を行う。

 標準的な設計例は、以下になる。40mの落差を150mの揚水管を使って1日800lの水を汲み上げる場合、12Vのポンプを採用し、公称最大出力100W程度(6A程度)の太陽光パネルを2枚、90Ahの鉛蓄電池を2台採用すれば適切という。

 農研機構では、手順を簡略化し、わかりやすく解説したマニュアルを作成し、ウェブサイトでも公開した。同システムは、かんきつ類だけでなく、他の作物への導入も可能なため、生産地における太陽光発電の利用拡大を期待できるという。