パワー・ツー・ガスの設備の稼働式の様子(出所:RWE社)
パワー・ツー・ガスの設備の稼働式の様子(出所:RWE社)
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 ドイツの電力大手であるRWE社は8月17日、高効率な「パワー・ツー・ガス(power-to-gas)」の実証設備の稼働を開始したと発表した。

 「パワー・ツー・ガス」とは、太陽光発電の余剰電力など再生可能エネルギー由来の電気を使い、水素やメタンなどを作る仕組みを指す。水素やメタンとして貯めることで、再エネの余剰電力を有効活用できる。

 ドイツ西部にあるノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州のイッベンビューレン(Ibbenburen)に設置した。地域の電力や天然ガス、熱供給網と統合した、初めての設備になるという。

 実証では、太陽光発電と風力発電の余剰電力を使って、水から水素を作り、その水素を天然ガスの供給網において貯蔵する。

 水素は、その後、稼働率の高い電力生産に使われる。余剰電力を使って生成した水素を貯め、必要な時に取り出して電力に変える。

 ドイツ政府は、15年後に、国内の電力需要の50%を再エネで賄う計画を掲げている。現在の約2倍に相当する。この目標を実現するには、再エネの出力変動に即座に対応できる変換技術を実現し、エネルギー貯蔵の効率を向上させる必要があるとしている。

 RWE社は、そのために、「パワー・ツー・ガス」が有効とし、将来のエネルギー供給における重要な技術の一つと位置付けている。

 再エネの余剰電力を吸収する手段として、電力網の容量を増強するのは、現実的に限度がある。

 それに対して、電力を水素などのガス体エネルギーに換えれば、膨大な容量と供給ネットワークが整った天然ガスの供給網を使えると強調している。

 今回の実証では、パワー・ツー・ガスの設備を86%の利用率で稼働させると、最も効率的になるという。

 パワー・ツー・ガスの中核設備は、英ITM Power社が供給した。輸送用コンテナ内に収納され、設置されている。水を電解する際の排熱は、天然ガス供給ネットワークに送り込む際の、圧力の調整に使う。

 太陽光発電と風力発電による出力が低い時間帯には、既存の天然ガス供給網から燃料供給を受け、コージェネレーション(熱電併給)設備を介して、電力と温水を作る。

 パワー・ツー・ガスの出力は150kWとなっている。14バール(bar)の圧力条件で、水素を生成する。