「平成9年遠隔診療通知」の「別表」で示した遠隔診療の対象と内容の例
「平成9年遠隔診療通知」の「別表」で示した遠隔診療の対象と内容の例
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 厚生労働省は2015年8月10日、遠隔地を情報通信機器でつないで行う診療、いわゆる「遠隔診療」の解釈を明確化し、医政局長名で各都道府県知事に通達した。1997(平成9)年12月24日付の同省健康政策局長通知(平成9年遠隔診療通知、平成15年と同23年に一部改正)で例示した遠隔診療の適用範囲などを、必要以上に狭く解釈しなくてよいことを強調した内容。「情報通信機器の開発・普及の状況を踏まえ」(厚労省)、事実上、実地診療における遠隔診療の活用を広く認める方針を打ち出した形だ。

 平成9年遠隔診療通知では、遠隔診療の「基本的考え方」として、「診療は医師または歯科医師と患者が直接対面して行われることが基本であり、遠隔診療はあくまで直接の対面診療を補完するものとして行うべき」としている。その上で、「直接の対面診療による場合と同等ではないにしてもこれに代替し得る程度の患者の心身の状況に関する有用な情報が得られる場合には、遠隔診療を行うことは直ちに医師法第20条等に抵触するものではない」とし、いくつかの「留意事項」を示した上で遠隔診療が認められる場面を示していた。

事前の対面診療なしでもOK

 今回の通知は、平成9年遠隔診療通知における「基本的考え方」や「留意事項」を、必要以上に狭く解釈しなくても良い旨を強調したもの。具体的には次の3点を明確化した。

 (1)平成9年遠隔診療通知の留意事項において、「直接の対面診療を行うことが困難である場合」として「離島、へき地の患者」を挙げたが、これは「例示」であるとした。すなわち、遠隔診療の対象を、離島やへき地の患者に限る必要がないことを明確にした。

 (2)平成9年遠隔診療通知の留意事項において、「遠隔診療の対象と内容」を「別表」で示したが、これは「例示」であるとした。すなわち、別表に示した「対象(在宅糖尿病患者など9種類)」以外の疾患も遠隔診療の対象になり得ること、および別表に示した「内容」以外の診療内容も許されることを明確にした。

 (3)平成9年遠隔診療通知の基本的考え方では「診療は医師または歯科医師と患者が直接対面して行われることが基本」としていたが、今回は「患者側の要請に基づき、患者側の利点を十分に勘案した上で、直接の対面診療と適切に組み合わせて行われるときは、遠隔診療によっても差し支えないこととされており、直接の対面診療を行った上で、遠隔診療を行わなければならないものではない」とした。すなわち、直接の対面診療を事前に行うことが必ずしも遠隔診療の前提条件とはならないことを明確にした。