パナソニックは2015年7月、東京・有明にある同社の展示場「パナソニックセンター東京」内に、ショウケース「Wonder Life-BOX」を新設した。2020年以降の未来のくらしをキーワードに、同社が持つさまざまな新技術を導入している。これまでの技術ベースの“シーズ指向”から、生活者視点に重きを置いた展示にした点を特徴にうたう。
Wonder Life-BOXの中で重要な役割を果たしているのが、居住者と双方向にコミュニケーションを取りながらさまざまな場面で生活をサポートする「パートナー」である。パナソニックの画像認識技術や音声認識技術などで居住者の状況を把握し、適切な情報を提供するエージェント機能だ。例えば、キッチンでは、メニューを推進したり、調理方法を提示したりする。屋外の日射量なども教えてくれる。このパートナーは、プロジェクターによってテーブルや壁など、いろいろな場所に投射される。プロジェクターは天井にあり、投射口付近に可動するミラーが配置されている。このミラーを動かしてパートナーを適切な位置に表示する。
パナソニックは、パートナーのユーザーインターフェース(UI)部分を、ゲーム企業であるバンダイナムコエンターテイメントと共に開発した。パナソニックによれば、以前から別の案件でバンダイナムコエンターテイメント(当時はバンダイナムコゲームス)とかかわりがあった。こうした付き合いがあったことから、Wonder Life-BOXでの共同開発先として、バンダイナムコエンターテイメントの名前が挙がり、2014年ごろから協業が始まった。
バンダイナムコエンターテイメントは、「人を思わず夢中にさせる仕組み」「快適で使いやすいユーザーインターフェース」「継続利用を促す仕組み」といったゲーム制作の優れたノウハウを、ゲーム以外の分野に生かす取り組みに力を入れている。このノウハウを同社は「ゲームメソッド」と呼び、今回のパートナーのUIや振る舞いの表現に生かしている。
パートナーの名前は「あかりちゃん」。これは、パナソニックが創業時から取り組んでいた照明器具、電球を意識したキャラクターである。未来の暮らしにも明かりを灯すパートナーでありたい、との思いから作ったという。パートナーは表情を持ち、居住者の反応によって喜怒哀楽を表現する。表情だけでなく、音も入れて、パートナーの状況を分かりやすくした。例えば、パートナーの提案を居住者が受け入れると、喜びの表情を浮かべつつ、上昇音を出す。こうした映像と音を組み合わせて、ユーザーに分かりやすい情報を提示する方法は、ゲーム開発の中で培われたものだ。
パナソニックによれば、当初はバンダイナムコエンターテイメントにコンサルティングしてもらい、実装などは自社で行うつもりだった。だが、適切なUIを作るには、パートナーの目や口の配置から、口角の上げ方、音の付け方まで細かな調整が必要で、自社ではなく、こうしたノウハウを持ったバンダイナムコエンターテイメントのチームに依頼するのがもっともよいと判断した。