X線透視に頼らず、センサーを使ってカテーテルの位置を把握し、不整脈などのカテーテル治療に伴うX線被曝を大幅に低減する――。そんな技術が日本に上陸した。米St. Jude Medical社日本法人のセント・ジュード・メディカルが2015年7月、杏林大学医学部付属病院(東京都三鷹市)に納入した「MediGuide Technology System」がそれだ(pdf形式のニュースリリース)。アジア地域では初の導入例となる。同病院で既に9例のカテーテル治療に適用し、治療中のX線照射量を「従来比1/8に低減できた」(杏林大学医学部 放射線医学教室 主任教授の似鳥俊明氏)。2015年8月5日、東京都内で報道機関向け発表会を開催した。
不整脈などの治療では一般に、経皮的カテーテル焼灼術(カテーテル・アブレーション)と呼ばれる手技が使われる。血管にカテーテルを挿入し、不整脈の発生源の心筋にまで到達させて、高周波で局所的に熱凝固させることで余分な電気伝導路を断ち切る治療だ。この際、診断用および治療用のカテーテルの位置は、Cアームと呼ばれるようなX線撮影装置を用いた透視によってリアルタイムに把握する。
術中のX線照射時間は一般に数十分にわたり、これに伴う患者と術者の被曝が問題となっている。海外では「カテーテル・アブレーションを日常的に行っている医師は、そうでない場合に比べて生涯における脳腫瘍の罹患率が有意に高いとのデータがある。しかも(治療時にX線が当たりやすい)脳の左半球に高頻度に発生している」(ライプチヒ大学心臓病センター 循環器科 准教授のPhilipp Sommer氏)という。