東京大学で開かれたシンポジウムに登壇した三菱重工業会長の大宮英明氏
東京大学で開かれたシンポジウムに登壇した三菱重工業会長の大宮英明氏
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2015年秋の初飛行機を目指す「MRJ」
2015年秋の初飛行機を目指す「MRJ」
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 「私は飛行機に乗るのが大好きで、戦闘機にも乗ったことがある。(2015年秋に予定されている)国産ジェット旅客機『MRJ』の初飛行にも乗せてほしいと言ったが、ダメだと断られた。2回目か3回目のフライトには乗りたいなと思っている」

 三菱重工業会長の大宮英明氏は、2015年7月28日、東京大学で開かれたシンポジウム「国産旅客機の開発とその意義」の基調講演でこう語った(図1)。三菱重工のグループ会社、三菱航空機が手がける78~92席の小型ジェット旅客機、MRJの開発は大詰めを迎えており、2015年秋の初飛行に向けた準備が進んでいる。

 大宮氏は三菱重工がMRJの事業化を決断した2008年に社長に就任し、2013年に会長に就任した後もMRJのプロジェクトを後押ししてきた。MRJの開発スケジュールは何度も延期され、費用も想定を大幅に上回ったが、あきらめずに続けてきた経緯などを語った。

 「航空機は高度で複雑化した技術集約型の製品で、MRJの場合は部品点数は100万点にもなる。2008年に社長になった当時、(開発費は)1500億~1800億円かかると言っていたが、実際は、はるかに多くのお金がかかることになった。だが、それは同時に大きな参入障壁にもなる」。

 ジェット旅客機は開発費用が莫大で、アフターサービス体制の構築にも初期投資がかかる。このため長期間にわたり赤字を覚悟する必要があるが、いったん成功できれば、競合メーカーの数は限られており、得られる果実は大きいとする。

 「技術は偏執症(パラノイア)的にやる。強度試験機を作って壊す必要があり、非常にお金がかかる。安全性の確保を徹底的にやる。着水試験、降雨試験、着氷試験などを、設備が整っている米国で進めている」