図◎報道陣からの質問に答えるホンダ代表取締役社長の八郷隆弘氏
図◎報道陣からの質問に答えるホンダ代表取締役社長の八郷隆弘氏
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 ホンダ代表取締役社長に八郷隆弘氏が就任した。2015年7月6日に開いた社長就任会見でスピーチをした後、同氏は報道陣からの質問に答えた。主な質問と回答は以下の通り。

ものづくりの経営・戦略に関するQ&A


──グローバル6極体制の進化を目指すという。八郷氏が考える次の進化の形とはどのようなものか。

八郷氏:生産や販売、開発、調達について、各地域が独立して事業を遂行できる力を付けてきた。その結果、北米と中国では地域専用車を現地で開発・生産して販売する体制を構築できた。次のステップは、こうして力を付けてきた各地域を、世界でいかにうまく効率良く運営するかだ。グローバル本社が、相乗的かつ有機的に各地域を調整して効率の最大化を目指す。

 最初に進めたいのは、地域で整ってきた生産能力を効率良くグローバルで展開することだ。日本からは「フィット」や「Jazz」を輸出しようと考えている。欧州からは「Civic」の5ドアを他の地域に輸出し、カナダからは「CR-V」を欧州に輸出する。こうした効率的なことをもう少し進め、相互補完ができるような体制をつくって競争力を高めていきたい。


──6極体制の進化により、グローバルなフレキシブル生産体制の構築を目指すという。だが、ホンダは従来から混流生産に力を入れるなどフレキシブルな生産を実現してきたはずだ。例えば、寄居工場で開発した生産技術も世界で横展開するという話だった。どういうことか。

八郷氏:これまでホンダは、グローバルで生産技術を横展開して各地域の生産能力を高めてきた。その結果、現在は地域によって生産能力の差が多少ある。これを、配分を含めて、グローバルで最適なものに変えていくことが次のステップだ。具体的には、地域専用車を他の地域に輸出したり、Civicのように欧州の1カ所で造って他の地域に輸出したりする。さらに、各地域の市場変化を効率的に吸収できるように、車種の配分(アロケーション)を考えていく。


──ホンダの歴代社長は、比較的、他社との提携に積極的ではなかったと思う。だが、今、トヨタ自動車とマツダが提携関係を結ぶなど状況が変わってきている。八郷氏は他社との提携についてどう考えるか。

八郷氏:ホンダ独自の技術でビジネスを行っていきたいという基本的な考え方に変わりはない。ただし、技術の多様化なども起きているため、顧客とホンダにメリットがあるものに関しては絶対に提携しないというわけではなく、デメリットを考慮しつつ(柔軟に)判断していきたい。


──前社長である伊東孝紳氏が2016年度に600万台というグローバル目標を立てた。八郷氏は台数目標を立てるつもりはあるか。

八郷氏:顧客視点を第一に考え、ホンダらしい商品・技術づくりに優先順位を置いて経営していく。600万台というのは、当時それくらいの事業規模にしたいということから発したもので、販売目標ではなかったと思う。また、2016年度にその数字の達成は難しいと認識している。


──これまでホンダの社長は、本田技術研究所の社長を経験した人が就任してきた。だが、八郷氏はそれを経験していない。ただし、技術系ではある。これに関してどう思うか。

八郷氏:私は研究所の社長を経験していないが、研究所の社長を経ないとホンダの社長ができないという決まりはない。ただ、私は26年間、研究所のマネジメントなども含めて経験してきたので、研究所のものづくりのやり方や開発の仕方を理解しているつもりだ。

 その後、私はいろいろな部署を回ってきた。私の強みは、ずっと現場に根付いて仕事をしてきたことだ。従って、現場の声をしっかりと聞き、それを経営に反映することで、現場で頑張っているチームがしっかりと働けるようにすることができる。これが、私が社長になる意味だとも思っている。

 技術(出身)者が社長でなければならないという決まりは、私はないと思う。だが、ホンダは技術系の人間(技術者)と営業企画の人間が二人三脚で経営することが良い点だとも考えている。