JAXA第一宇宙技術部門H3プロジェクトチームプロジェクトマネージャの岡田匡史氏
JAXA第一宇宙技術部門H3プロジェクトチームプロジェクトマネージャの岡田匡史氏
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 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2015年7月8日、記者会見を開催し、2020年度の実用化を目指す次世代の国産液体燃料ロケット「H3」の概要を説明した。同ロケットは、現行の「H-IIA」「同B」の後継となる基幹ロケット。低コスト、高信頼性、サービスの柔軟性の高さを追求することで、世界的に増加傾向にある大型の人工衛星の打ち上げ需要の取り込みを狙う。

 第1段に推力150tfの液体ロケットエンジン「LE-9」を2~3基、第2段に推力14tfの液体ロケットエンジン「LE-5B改良型」を1基、固体ロケットブースター(SRB)を最大4基搭載する。最小構成は、第1段エンジン3基、第2段エンジン1基、SRBなしのときで、その目標打ち上げ能力(ペイロードの質量)は、太陽同期軌道へ4t以上。第1段エンジン2基、第2段エンジン1基、SRB4基の場合の目標打ち上げ能力は、静止トランスファー軌道へ6.5tとする。

 目標とする打ち上げ価格は、最小構成の場合でH-IIAの約半額に相当する約50億円。そのために実施を計画するのが、システム構成の簡素化、設計段階における低コストな製造・運用コンセプトの作り込み、日本が得意とする技術の活用、といった低コスト化策だ。

 例えば、H-IIA、同Bでは第2段にのみ使っていたエクスパンダーブリードサイクルエンジンという方式を、簡素さが特徴で本質的安全性と低コスト化を両立できるとの観点から、第1段エンジンとしても適用。第1段エンジンでは第2段エンジンに比べて大きな推力を求められるため、H-IIA、同Bの同エンジンに対して10倍以上の推力を出せるように燃焼器部分の開発に取り組む。さらに、ロケットに搭載する機能の配分を見直すことで、システムを簡素化し搭載コンポーネント数の削減を図っているという。