実験結果の一部。「Alzheimer's & Dementia: Diagnosis, Assessment & Disease Monitoring」に掲載された論文から抜粋。
実験結果の一部。「Alzheimer's & Dementia: Diagnosis, Assessment & Disease Monitoring」に掲載された論文から抜粋。
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 認知症の兆候を、血液検査でとらえる。そうした手法への道を開く技術を、筑波大学 医学医療系 准教授の内田和彦氏らのグループが、同大学発ベンチャーのMCBI(Molecular and Clinical Bioinformatics)などと共同で開発した(ニュースリリース2015年6月26日の記者会見資料のpdf)。認知症の原因物質を排除したり毒性を防御したりするたんぱく質が、認知機能低下を示すバイオマーカーになることを発見。このバイオマーカーを使って、正常な認知機能と、認知症予備軍とされる軽度認知障害(MCI:mild cognitive impairment)を80%の精度で識別することに成功した。

 米学術誌「Alzheimer's & Dementia: Diagnosis, Assessment & Disease Monitoring」に論文が掲載された(論文のpdf)。論文タイトルは「Amyloid-β sequester proteins as blood-based biomarkers of cognitive decline」。

 認知症の大半を占めるアルツハイマー病では、発症の20年ほど前から、アミロイドβペプチドと呼ばれる物質が脳内に蓄積される。プレクリニカル期と呼ぶ無症状の時期、さらにはMCIと呼ぶ段階を経て、認知症を発症する。認知症では早期の発見と介入が重要とされ、プレクリニカル期やMCIでの介入を可能にする上では、認知機能低下の目印となるバイオマーカーの開発が欠かせない。

 今回の研究は「シークエスタータンパク質」と呼ぶ、アミロイドβペプチドの排除や毒性防御に働くたんぱく質の血中変化が、認知機能低下のマーカーになることを明らかにしたもの。「すぐにでも健診で活用できる」(研究グループ)という、一般的な血液検査で測定可能だ。