ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)の予測する再生可能エネルギーの電源比率(出所:BNEF)
ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)の予測する再生可能エネルギーの電源比率(出所:BNEF)
[画像のクリックで拡大表示]

 ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)は6月2日、政府が公表した長期エネルギー需給見通し(案)に対し、「政府の数値は現在の市場動向に合っていない」とし、2030年の電源構成に占める再生可能エネルギーの比率を26.1%(政府案は22~24%)、そのうち太陽光の電源構成全体に占める比率は12%(政府案は7%)、原子力の同比率は9%(政府案は20~22%)との独自の予測値を公表した。

 同社のアナリストによれば、「2013 年を基準とした2030年時点のCO2排出削減量を 26%としたことは現実的だが、そこに至るまでのアプローチと結果については、大きな矛盾がある」と述べている。

 原子力について、政府案の原発比率20~22%(213~234TWh)を実現するには、少なくとも38GWの発電容量が必要とするが、同社の分析では、「最も楽観的なシナリオでさえ、2030 年に運転可能な発電容量は26GW。原子炉の運転期間制限年数40年を延長する場合に発生するコストや、追加的に発生する規制の重荷を考慮すると、原発の占める割合は10%にも満たないであろう。政府の目標を達成するためには、少なくとも13基の原子炉が運転期間の延長、あるいは新たな原子力発電所を建設する必要がある」としている。

 火力発電の比率について、政府案は56%としているが、BNEFは65%まで増えると予測している。両者の違いは、天然ガス火力の役割に起因している。政府の予測では、石炭火力とガス火力の割合を、それぞれ 26%、27%とし、石油火力発電に関しては 3%とした。これに対し、BNEFの予測では、石炭火力を23%、ガス火力を42%、石油火力を0%としている。「現存する電力会社の発電資産と計画中のプロジェクト、特に太陽光発電など出力不安定な再エネの増加に対し、ガスタービンが必要となることから、今後ガス火力がより大きな役割を担う」と分析している。

 再エネについて、BNEFは、「政府の導入量予測は、今後新規の設備認定が行われる可能性があるにもかかわらず、主に固定価格買取制度(FIT)におけるこれまでの設備認定量(風力の場合は、環境影響評価中のプロジェクトの容量)に基づいている。結果として、2030年に太陽光の割合を7%と予測した。BNEFでは、太陽光の割合は12%に達すると予測している。政府の予測では、FITがなければ太陽光発電は導入されないという暗黙の仮定を置いている。現在、日本の平均的な屋根上住宅用太陽光発電システムの価格は、ドイツやオーストラリアに比べ 50% 以上高い。両国の市場では、FITのような支援が減らされたことに伴い、すぐに太陽光のシステム価格が低下した。今では、両国の屋根上太陽光の発電コストは、電気料金に対して十分な競争力がある。日本でも、新たに屋根上太陽光の増加を抑えるような規制が課せられない限り、両国が経験した道を歩むことを否定する理由はない」としている。

 全体として、「政府の長期エネルギー需給見通し骨子(案)は、政治的に優遇されている石炭火力・原子力を守ると同時に、より少ないCO2排出削減量を達成するという矛盾した政治的目標を調整する試みのように思われる」としている。

 BNEF駐日代表のアリ・イザディ氏は、「市場動向と現在の政府の政策を分析すると、将来の日本の電源構成は、政府の案とは大幅に違ったものになる」とし、「それでも、BNEFによる将来の電源構成の見通しに沿った 2030年のCO2排出量は、2013 年を基準として 28%削減される」と予測している。