「メルセデス・ベンツ」のEV用の蓄電池をモジュール化して定置型に(出所:ダイムラー)
「メルセデス・ベンツ」のEV用の蓄電池をモジュール化して定置型に(出所:ダイムラー)
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個人向けにも販売(出所:ダイムラー)
個人向けにも販売(出所:ダイムラー)
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 ドイツの自動車メーカーのダイムラーは5月28日、定置型のエネルギー貯蔵システムを電力網や産業、個人向けに展開すると発表した。

 これによって、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入を、さらに加速することに寄与すると強調している。

 ダイムラーの100%子会社の蓄電池会社である、Deutsche ACCUmotive社が手掛ける。

 Deutsche ACCUmotive社は、2009年の設立以来、ダイムラーの「メルセデス・ベンツ」や「スマート」といった電気自動車(EV)やハイブリッド車向けに、Liイオン蓄電池の開発、製造や応用開発を担ってきた。

 自動車分野とともに、再生可能エネルギーの出力制御分野の市場を同時に立ち上げていくことで、EV、蓄電池、再生可能エネルギーのそれぞれを、安定的な市場に育てていくことが可能になる。

 EVメーカーが、蓄電池を再エネの出力変動を抑制する用途に使い、電力網向け、産業向け、個人向けに展開する戦略は、米テスラも明らかにしている。

 ダイムラーの場合、同社初となる産業用のLiイオン蓄電池ユニットが、すでに電力網で運用されている。パートナー企業である、ドイツMobility House社とドイツGETEC Energie社による合弁会社のCoulomb社が運用している。

 Coulomb社は、ドイツの電力市場に売電している。Deutsche ACCUmotive社の定置型エネルギー貯蔵システムを、カーメンツ(Kamenz)とザクセン(Saxony)に設置し、電力網の安定的な運用に使っている。

 こうした用途には、従来、石炭火力発電や原子力発電が使われてきた。これに対してCoulomb社は、96個・合計容量500kWhの蓄電池モジュールを使って実現している。段階的にエネルギー貯蔵システムを増設し、今後数週間で3000kWhまで増やす。

 電力網向けのほか、スーパーマーケットなどの店舗や事業所向けにも展開する。個人向けにも拡販する。個人向けでは、ドイツEnBW社と提携する計画としている。

 ダイムラーでは今後、ドイツ国内、海外の両市場に拡販するため、販売パートナー企業と連携していく。

 供給するエネルギー貯蔵システムには、ダイムラーの「メルセデス・ベンツ」のEVに使われているという、ドイツ製のLiイオン蓄電池を採用している。

 Deutsche ACCUmotive社によると、同社は2012年以降、再エネ発電と蓄電池の最適な連携に取り組んできた。

 蓄積した知見を活かし、電力網や住宅への再エネの導入を加速できるようになるとしている。100万km以上の広範囲な地域で検証し、極暑・極寒の地域への導入にも対応できるという。

 産業向けは容量5.9kWh、個人向けは同2.5kWhの蓄電池モジュールで構成する。一つのエネルギー貯蔵システムには、個人向けでは、最大8個の蓄電池モジュールを増設でき、これによって最大約20kWhまで拡張できる。6月に受注を開始し、秋に納入を開始する。