図1 データセンター向け半導体におけるIntel社の狙い
図1 データセンター向け半導体におけるIntel社の狙い
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 「FPGA(field programmable gate array)事業を手に入れることはIntel社の成長戦略と整合している。Altera社の製品とIntel社のIPポートフォリオを組み合わせることで、データセンターやIoT(Internet of Things)市場における顧客ニーズに合致した新たなカテゴリの製品を提供できるようになるからだ」。米Altera社の買収に伴い、米Intel社の経営幹部はこうしたコメントを寄せている(関連記事1関連記事2)。

 このコメントにもあるように、Intel社がAltera社を買収することで、大きく2つの市場セグメントを強化できる。1つはデータセンター向け、もう1つがIoT向けである。前者のデータセンターについては、扱うデータ量が飛躍的に増すビッグデータ解析などに求められる性能を達成するために、マイクロプロセサとFPGAのインテグレーションの度合を高めたいというIntel社の思惑がある(図1)。Intel社の予測では、クラウド・サービス事業者が持つサーバー・ノードの最大1/3が2020年までにFPGAを採用するという。

 現時点のデータセンターでは、FPGAの搭載に着手しているが、Intel社によれば、マイクロプロセサのパッケージと、ディスクリートのFPGAパッケージをボード上で組み合わせる方法が主流という。今後、マイクロプロセサ・チップとFPGAチップを同一パッケージもしくは同一モジュールに内蔵することで、マイクロプロセサとFPGA間の配線長などを短縮し、結果、半導体部の処理性能を高めることを目指している。

 そして、当然のことながら、その先にある究極とも言えるのは、マイクロプロセサとFPGAを同一シリコン上で統合(インテグレーション)することである。Intel社によれば、このようにインテグレーションの度合を高めることで、データセンター向けの半導体の性能は2倍以上に向上するとしている。ここで、マイクロプロセサとFPGAを同一シリコン上で統合するためには、設計レベルでの協業が不可欠となる。これを成し遂げようとすると、もはや会社が別々に存在していては効率が悪い。だからこそ、Intel社はAltera社を買収し、設計部門まで含めた真の統合を目指したわけだ。

IoT向け半導体におけるIntel社の狙い

 後者のIoT向けに関しては、Altera社の買収によって、Intel社は産業機器や自動車といった用途におけるASSPやASICの代替を狙っている(図2)。例えば、産業機器のオートメーション制御などに使われるASSPの代替に向け、Intel社がもともと持つIAアーキテクチャの技術で実現する基本機能(プロセサ、メモリ・コントローラ、セキュリティ、標準IOの機能)と、Altera社のFPGAで実現したリアルタイム制御などの産業機器特有の機能を1チップ上で統合することなどを想定している。この場合、産業機器特有の機能については、顧客に出荷する前にIntel社がプリプログラムできるとする。

 別の例では、自動車のADAS(advanced driver assistance systems)向けのASICなどを代替するために、前述のIAアーキテクチャによる基本機能(プロセサ、メモリ・コントローラ、セキュリティ、標準IOの機能)に、顧客特有のIP(機能安全、コンピューター・ビジョンなど)を顧客が自らFPGAに実装して組み合わせられるとする。この場合、IAアーキテクチャの基本機能とFPGAの機能は、統合ダイもしくはマルチチップパッケージのいずれかで実装されることになりそうだ。

図2 IoT向け半導体におけるIntel社の狙い
図2 IoT向け半導体におけるIntel社の狙い
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